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NPO通信
取材・文/円子幸男 写真/編集部 図版・写真提供/北海道宇宙科学技術創成センター
連載第4回 マイロケットを打ち上げるのも夢じゃない!──北海道宇宙科学技術創成センター
北海道宇宙科学技術創成センターイメージ画像

■NPOプロフィール
北海道宇宙科学技術創成センター
(Hokkaido Aerospace Science and Technology Incubation Center:HASTIC)

2002年に任意団体として設立、翌03年にNPO法人に。北海道内に点在する宇宙開発関連の施設や大学研究室をネットワーク化し、実践的な宇宙科学技術研究やその事業化、次世代を担う研究者・技術者の育成などをめざす。現在、超小型人工衛星、ハイブリッドロケット、微小重力利用、宇宙医学などのワーキンググループが研究開発を展開している。
http://www.hastic.jp/

宇宙開発のイメージを覆す

宇宙イメージ 北海道でロケット打ち上げや宇宙開発なんて本当に可能なの?
 だれしもそんな疑問を抱くのではないか。アメリカのスペースシャトルの例をあげるまでもなく、開発研究にはそれこそ天文学的な費用がかかりそうだし、少しの失敗も許されないだけに技術的にも完璧なものが求められるはず。北海道の一NPO法人の力のとうてい及ぶところではないのではないか──そんな疑問がわいて当然だ。

 

副理事長・専務理事の伊藤献一さん がしかし、「お金がかかって当たり前」という発想こそが実は日本のロケット開発のネックなのではないか、と北海道宇宙科学技術創成センター(以下HASTIC)の副理事長兼専務理事、伊藤献一さんは指摘する。
 「性能のいい、絶対失敗しないロケットを作ろうとすれば、当然お金がかかりますよ。でもそうじゃなく、安く作っていいんじゃないか、そのほうが確実にロケット開発の成果がでるんじゃないか、というのがHASTICの考えなんです。失敗してもいい、壊れてもいい、となればいくらでも安くできる。まあ、人の乗らない小さなロケットをやっているから言えることではあるんですが」

 

CAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケットエンジンの構造※CAMUIは、CAscaded  MUltistage  Impinging-jet(縦列多段衝突噴流式)の略であり、アイヌ語の「神」という意味から名づけられた。 同じ目的を達成するのに従来のやり方の10分の1以下の費用ですます──これがHASTICの掲げるポリシーだが、それを如実に体現しているのが、北海道大学大学院工学研究科の永田晴紀さんらのワーキンググループが開発したCAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケットだ。
 ハイブリッドロケットは固体燃料を液体酸素を使って燃焼させて推力(押し上げる力)を得るものだが、従来のハイブリッドロケットでは火薬を使う固体ロケットの推力に遠く及ばなかった。そこで短時間で燃料をたくさん燃やす工夫を凝らし、固体ロケット並みの推力を実現したのがCAMUI型ハイブリッドロケットなのである。

 「燃料となるプラスチックと液体酸素は安価で安全でだれにでも扱える。火薬のように特別な安全管理などで経費がかさむこともない。しかも機体は回収して何度でも使える。だから安くやれる。巨額をつぎ込む宇宙開発は少数の研究者しかタッチできませんが、これなら多くの人がかかわれます」
 安い。失敗OK。だれでもやれる。
 どうやら私たちがこれまで宇宙開発に抱いてきたイメージの対極に、HASTICのめざすものがあるようだ。

 

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