デビューして10年。
時代小説は蓄積であり、3年後より5年後、10年後のほうが充実している、と宇江佐さんはいう。となると、私たちはますます、宇江佐さんの次の物語を読みたくなる。妻から母へ、そして子供たちも親離れしていき、台所の視点も静かに熟成していく。
「デビュー当時は、まわりが見えなかったけれど、今は余裕を持って見回せる。私は時代小説を書いていますけれど、現代に通じる世相、社会的な不安などに関心をもって、物語にとり入れています。その時代にあった時代小説があるんです。IT革命といわれる現代にあって、本当は時代小説のような昔の話はいらない。でもそれを買って読む人がいるのは、日本人としての気持ちや感情は変わっていないからでしょう。人としての感情を共有したいという思いがあるかぎり、私のような時代小説家が求められるのだと思います」
直木賞候補になることすでに6回である。いつ受賞するのか、私たちとしてはハラハラし通しだが、ご本人はいたって鷹揚に見える。考えてみれば、池波正太郎も宮部みゆきも6回目にしての受賞。最多記録をもつ古川薫は何と候補に挙がること10回、25年目の受賞だった。まだまだ、これから、だ。 |