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北海道人インタビュー 連載4
ロボットサッカーの目指すゴールは鉄腕アトム! 公立はこだて未来大学教授 松原仁さん

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構成・文/円子幸男 写真/佐々木郁夫
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プロフィール,プロフィール

 

ワールドカップでロボットが人間に勝つ?
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 日韓共催で行われた2002年サッカーワールドカップ。日本代表の活躍に国中が沸いていたまさにそのとき、人知れず、もうひとつのサッカーワールドカップが開かれていた。
 いや、人知れずどころか、会場の福岡ドームには各国から約200チームが集結、5日間で12万人もの観客が押し寄せたのだから、もはや巨大イベントといってもよい。大会名は「ロボカップ2002福岡・釜山大会」。ロボットサッカー・ワールドカップ、略してロボカップは、人間の向こうを張り、サッカーをするロボットの世界一を競う大会である。

 松原さんは、そのロボカップ誕生時から深くかかわってきたひとりだ。
 「きっかけは人工知能の若手研究者らの酒の席での話でした。日本人は真似は得意だが新しいものを生み出す創造性に欠けると言われるけれど、どうもそれはしゃくである、何か新しい、一種のお祭りみたいなものをぶち上げたいと。で、ちょうどそのころチェスの世界チャンピオンにコンピューターが勝つのは時間の問題だと言われていたので、じゃ、チェスに代わるものを打ち立てれば、かつそれが世界中の仲間に受け入れられるものであれば、みんな乗ってくるんじゃないかと」
 とかく酒の席での威勢のいい話ほどその場限りになりがち。ところがこのときは酒の酔いは冷めても夢からは覚めない研究者が3、4人いた。こうして彼らがしらふの頭で練りに練ってたどり着いたのがロボットサッカー。ときあたかも、1993年に日本にJリーグが発足する1、2年前のことである。

 「野球だと誰にも打てない速い球を投げるロボットを作ればそれでおしまいだし、今の技術じゃロボットはジャンプできないのでバスケットも無理。でもサッカーなら、ボールをポンと押し出せば何とかサッカーらしくなるし、キーパー以外は攻めたり守ったりポジションがいろいろ変わるので、一般の人が見ても面白いだろうし、研究テーマとしても魅力がある。それにサッカーは何といっても世界で一番人気のあるスポーツですからね」

 数年の準備期間を経、「2050年までに人間のワールドカップの優勝チームに勝つロボットチームを開発する」との遠大な目標を掲げて第1回大会が名古屋で開かれたのは1997年。奇しくもこの年、コンピューターがチェスの世界チャンピオンについに勝った。流れはまさしくチェスからロボットサッカーへ。
 以来、国内大会と国際大会がそれぞれ毎年開かれてきたが、その間の“選手”の技量の向上たるや著しい。ロボカップでは人間がロボットを操作するのではなく、自律型といってロボット自らがボールを探し、それをどうするか考えて動くようにプログラムされている。試合で使われるボールはオレンジ色。オレンジ色の周波数がボールだということを教え込まれたロボットは、オレンジ色が視野に入るや「これはボールだ」と認識し反応する。青が見えたら、それは目指すべき敵のゴールポストだ。またロボット同士は無線で通信しあってプレーする。ところが――。
 あるまいことに、オレンジ色の服を着た観戦中の子供が視野に入ってあらぬ方向へ行ってしまったり、携帯電話や相手ロボットの無線と混線して動かなくなるロボットが続出したりで、「第1回大会は本当に悲惨でした」。それが最近では、「センタリングしたりフェイントかけたり、あるいは意図的に空きスペースを作ってそこに飛び込んでくる味方へパスを出すといった連係プレーもたまに見られるようになった。以前は1台のロボットがボールを運んでシュートするという感じで、もう団体競技じゃなかったんですけどね」。

 なにやら中田英寿もウカウカできないほどの(?)レベルアップぶりだが、その背後にロボット工学や人工知能などの技術の進展があったことは言うまでもない。

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