HOME > 連載【となりの北海道人】『私のお父さん』第36回

連載【となりの北海道人】『私のお父さん』

第36回

*話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■179『温和な人柄の中に残る戦争体験』

間谷真澄さん(55)=会社員、札幌市出身、札幌市在住

 ―お父さんの印象は?
 植物のような人(笑)。温厚でやさしくて子煩悩で、怒られた記憶もないです。昼下がりにゆったりとコーヒーを飲みながら、一人でオーティス・レディングを聴いている、そんなシーンが父のイメージですね。母が京唄子みたいな人だから、そのおとなしさが一層目立つんですよ。
 ―でも、若いときには特攻隊に志願されたそうですね。
 職業軍人だった父の兄に憧れて、からだが弱かったにもかかわらず旧制中学を卒業してすぐ特攻隊に志願したそうです。出撃のひとつ前の番まで来て終戦を迎え、死ぬ気だった父は脱力感を覚えたんじゃないかな。親戚の集まりなどで歳を聞かれるたびに、「20歳で死ぬ予定だったんですけどね」と冗談ぽく言ってますよ。
 ―戦争の話を聞かれたことはありますか?
 全くなかったんですが、戦後60年のときに戦時体験の聞き取りをしている人から依頼があり、私も一緒に話を聞きました。「世の中がそういう流れだったからそうした。いい戦争なんてひとつもない。絶対戦争はするな」と。心の中に秘めていた思いがあったんですね。

(鶴見裕子)

■180『愛される父』

小林民香予さん=会社員、札幌市出身、札幌市在住

―どんなお父さんですか?
 明るく強く、そして優しい父親です。いつも家族を全力で守ってくれ、失敗を責めたりは絶対にしません。大きな山みたいな存在です。社交的で友達も多いです。
―一度お見かけしましたが、楽しい雰囲気の方ですね。
 楽しいことが大好きです。両腕が少し不自由ですが、自分なりのやり方でなんでも挑戦します。服を着替えるのも大変そうですが一人で道外へ出張するし温泉にも入ります。どうしてもできないことは周囲の人に頼むと、若者からお年寄りまでみなさん快く協力してくれるそうです。困難に負けず、いつも前向きで一緒にいると楽しい人です。また、よくいただき物をします。家族で「わらしべ長者みたいだね」と言っています。ありのままでいて、みんなから愛されている感じです。我が家の誇りです。
 ―お父さんから影響を受けていることは?
 正直であること、人に偏見を持たないこと、できることは惜しまず、親切にすることです。

(皐月)

■181『仕事場で別な顔を知る』

佐生久志さん(36)=会社員、小樽市出身、札幌市在住

 ―遊びに連れて行ってもらった記憶があまりないとか。
 職場のキャンプに一緒に行ったことはあるんですけど、スキーに行くとか、水族館に行くとか、そういうことはあまりなかったですね。家族の会話でも父はもっぱら聞き役。家で仕事の話を聞いたり、何か説教をされたりしたこともないんです。
 ―定年退職されるまでのお父さんのお仕事は?
 自動車のディーラーです。遊びに連れて行ってもらえなかったのは、仕事が忙しかったこともあるんでしょうね。一度、学生時代に父のところで洗車のバイトをしたことがあるんですが、仕事場の父は家にいる父と全然違いました。お客さんとの対応、部下への指示、仕事だから当たり前ではあるんですけど、きりっとしてましたよ。家では除雪なんてほとんどしないのに一人で黙々と駐車場の雪をかいたり。なにより、いろいろな人と喋っていたのが意外で(笑)。
 ―同じ社会人になり、今だから分かるということも?
 母が「父さんだったら気が弱いんだから」とか愚痴るのを聞くと、分かってないなと思ったりします。そういえば、ぼくも家で仕事の話はあまりしないですね。

(鶴見裕子)

■182『スポーツマンは、孫に夢中』

星田奈美さん(35)=会社員、千歳市出身、札幌市在住

 ―お父さんはスポーツマンだそうですね!
 はい、スポーツ大好きです。若い頃から「ゴルフ命」です。毎日車庫で素振りをしているんですよ。それから、冬でも毎日2時間ぐらい外を走っています。退職はしましたが、まだまだ気持ちは現役。とても元気です。
 ―自衛隊におられたそうですが、転勤もされたのですか?
 父も母も熊本の出身です。父の転勤で千歳に来ました。父は九州男児です。我慢強く、礼儀正しくて、まず、相手や他人、お客さんのことを考えます。それに責任感が強い人で、そこが私は好きです。
 ―お孫さんに夢中だそうですね。
 兄の長男「あきひこ」君です。父も母もずっと孫が欲しかったので、大喜びです。毎朝、父は神棚を拝んだ後、反対を見てもう一度拝むんです。何かと思ったら、反対側にテレビがあって、テレビの上にあきひこ君の写真が飾ってあるんです。神様の後、孫を拝んでいるんですよ。あきひこ君と遊んだ後は、死んだように眠っています。

(皐月)

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