HOME > 連載【となりの北海道人】『私のお父さん』第23回

連載【となりの北海道人】『私のお父さん』

第23回

*話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■129『文字とともに思い出される几帳面さ』

酒井進さん(77)=社会福祉法人役員、旧樺太庁元泊郡知取町出身、北広島市在住

 ―お父さんは樺太で金融業を営み町議会議員を務めていたそうですが、子どもから見てどんな人でしたか。
 叱られた記憶はないけれど、仕事ぶりや暮らしぶりから厳しさを肌で感じていましたし、几帳面な上とても器用な人でした。例えば、「きちっとしたお札の方が借りた人も気分がよかろう」と、湿らせたお札をストーブの円筒に張り付けて、1枚1枚丁寧にしわを伸ばしていたのを覚えています。時間があれば万年筆で書き物をしていて、父の書いた手紙を出しに行くのが私の役目でした。
 ―ご自身、筆まめですよね。
 ええ。私は今も電話よりも手紙なんです。3年ほど前から万年筆のコレクションを始めたこともあり、インクの色を使い分けて書く楽しみが加わりました。教員時代の教え子に手紙を出すと、「万年筆で書いた先生の手紙は一生の宝物。返事を書きたいけれど私には書けない」と電話で返事をくれるんです。その都度、「字や文章の上手下手は関係ない。私は心で書いている」と、書くことを勧めていますが、父が生きていたら多分同じことを言うと思います。

(道産ヨネ)

■130『とてもいたずら好きなお父さん』

天谷美喜子さん(40)=公務員、室蘭市出身、札幌市在住

 ―お父さんはどんな方だったんですか。
 うちのお父さんは、皆さんの家のお父さんとは全然違うと思います。本当に子どもみたいで。
 ―というのは?
 例えば、お寿司にわさびをたくさん入れたりするんです。それを知らずに私が食べて「辛〜い」と言っている姿を見て喜んだり。「ミイコ、飛行機に乗りたいか」と聞かれて、「うん」って答えると、学校を休ませ飛行機で私を仕事先に連れて行ったり。私はお父さんがお客さんと話している横でじっと座ってる。「貴ノ花に会いたいか」とか「ピンクレディーに会いたいか」って聞かれたことも。会食の場に参加したり、楽屋を訪れたりしました。
 ―お父さんの職業というのは?
 「なんでも屋」って言っていました。興行関係の仕事もしていたようです。
 私は中学・高校と道外に、大学は札幌だったので、その頃、実家には戻る程度。大学のときに亡くなったので、お父さんとの記憶のほとんどは小学校までのものです。今、生きていたらどんな会話をするんだろう、と時々思います。

(杉本真沙彌)

■131『地域の長老のような存在』

高砂正雄さん(57)=出版社役員、石狩市出身、札幌市在住

 ―ご実家は農業を?
 いわゆる開拓農家で、祖父母が広島県と山口県からその親に連れられてきて、石狩で結婚し、農家を始めました。
 ―家業を継ごうとは。
 全く思わなかったし、石狩湾新港の開発で農地もなくなったから。
 ―忙しい仕事ですよね。
 早朝から水田に出て、昼も夜も牛の世話。水田や畑だけなら冬は道具の手入れをしたり出稼ぎに行けるけど、生き物を飼っていると365日朝から晩まで世話をしなくちゃならない。家族旅行なんか一度もない。
 小学校の時かな、先生が「自分たちは知的作業で大変だが、農家の人は体を使っていればいいから楽だなぁ」と。親の姿を見ていたので、そんなことはないのに、と思いました。
 ―農家をやめてからは?
 札幌で一緒に暮らしましたが、父親は石狩に愛着がありそこで活動していました。政治的なことには興味がないけれど、地域の長老のような存在だったようです。最後の仕事は「土地区画整理組合」の副理事。利害がかかわってくるので面倒な仕事のようでした。葬儀のときに「高砂さんのおかげで早く調整ができた」と聞き、「さすがうちの父親」と思いました。

(杉本真沙彌)

■132『自分の性格の中に感じる遺伝子』

當摩知佳さん(23)=会社員、稚内市出身、札幌市在住

 ―広告制作でご活躍ですが、年齢とキャリアを聞いて驚きました。
 仕事に就いたとき、まだ20歳前でしたから、若いということで不安感を持たれないよう、かなり背伸びしてましたね。ずっと憧れていた仕事だから辛いことがあっても頑張れたし、お客さんがまたすごくいい方ばかりで、いろんな面で育てていただきました。“まごころ”を座右の銘に仕事に全力投球しています。
 ―そうしたバイタリティーの源は?
 しいて言えば負けず嫌いで、好きなことに夢中になる性格でしょうか。それは頑固なところも含め、父の娘だなって感じるところでもありますね。
 ―負けず嫌いとか頑固という印象は、まったくありませんが。
 多分父が反面教師になっていて、そういう部分を人前で出さないようにしているからでしょう(苦笑)。父は仕事と趣味優先でわが道を行くタイプ。私はそこも父似かも。で、弟はというと、家族思いで母を特に大事にしているから、結婚したら間違いなく家庭的で子煩悩なお父さんになると思います。

(道産ヨネ)

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