HOME > 連載【となりの北海道人】『私のお父さん』第20回

連載【となりの北海道人】『私のお父さん』

第20回

*話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■117『かわいらしい、いとしい父』

長屋のりこさん(67)=会社役員、東京都出身、小樽市在住

 ―お父さんはどんなお仕事を?
 自動車の修理工場を経営していました。父には直せないものがありませんでした。走っている車を見ただけで悪いところがわかるので、工場長は父を“神さま”なんて呼んでいました(笑)。ボルトなんかの光ものを拾ってきては指輪を作ったり、色々な道具を発明したり、とにかく器用でした。
 ―お家にはたくさんの人がいらっしゃったとか。
 母方の親戚や兄の同級生など生涯通じて全部で65人、大学に通う人の面倒を見ていました。26人の工員さんの食事も母が作っていました。中学を卒業したばかりの人を工員として育てるんですけど、通信簿はみんな「1、2、1、2」。父は「こういう子がここにすがりついて育つんだ。こういう子こそ一つのことにとりつくんだ」と。
 ―ご趣味はどんなことですか。
 俳句を作ったり、絵を描いたり。今でも思い出すのが、「ピーマンをからりと揚げし昼の膳」という句です。覚えるまで何度もよまされました(笑)。
 とてもかわいらしい、いとしい父です。

(杉本真沙彌)

■118『働きぶりや行動で、大事なことを教えてくれました』

藤本定則さん(54)=会社役員、上川管内美深町出身、札幌市在住

 ―札幌市内5箇所に鍼灸・マッサージの治療室を開き、ご多忙ですね。
 この道35年。気を抜かず仕事に打ち込んでこられたのは、コツコツ農業に励む家族や近所の人を見て育ったからだと思います。
 ―ご実家はどのような作物を作っていたのですか。
 酪農を柱に米も作っていました。当時の酪農は年中休みなし。子どもたちも早起きして手伝うのが当たり前でした。おやじは真面目で口数が少なく地味な感じ。昔の人は、みんなそんなもんですよね。ああしろ、こうしろとは言わなかったし、叱りもしなかったけど、逆に効き目があった気がします。
 ―お父さんの人柄を物語るエピソードを一つ挙げるとしたら。
 そうねぇ。小学生のころ、雪が降った日、学校から帰ると、玄関先にスキーが立て掛けてありました。遊ぶものなんてない時代、帰ってきたら、すぐにスキーができるようにと、おやじが物置から出して目に付くところに立て掛けておいてくれたんです。ワックスもちゃんと塗ってあって、完ぺきでした(笑)。

(道産ヨネ)

■119『わかってきたときにわかる』

渡部美喜子さん(45)=小学校教員、札幌市出身、札幌市在住

 ―教員の傍ら、いろいろと活動を?
 仏教やチベット仏教に興味を持っています。仲間と読書会を開いたり、書評を書いたり。哲学、マラソン、友人とお酒を飲むことも。
 ―お父さんと二人暮らしなんですね。
 お母さんが亡くなったのがきっかけで、二人暮らしを始めました。お母さんが大体家事をやってたので、お父さんは、こりゃこまったと思ったんじゃないですか。親子だし一緒に暮らしても大丈夫だと思いましたが、ちょっとしたことがストレスになりました。何かしようと思っても、お父さんがいると思えばすぐにはできないし、私が連れてきた猫を「猫は死体のある部屋に入れると踊るから入れちゃいけない」と拒絶したり。それぞれがマイペースで暮らしてきたからでしょうね。
 ―現在はいかがですか。
 お互いに慣れたと思います。今では猫とも仲良くしてくれています(笑)。歩み寄ったんでしょうね。でもそれは関係が修正されたとわかってきたときに初めて、お互いが歩み寄ったんだとわかるんです。

(杉本真沙彌)

■120『家族の悲しみと喜びをたくさん知っている人』

桐山孝子さん(34)=会社員、熊本市出身、札幌市在住

 ―熊本で生まれ、北海道、神奈川、北海道と、ダイナミックな転居ですね。
 父が自衛官で、北海道内でも札幌から稚内に行き、再び札幌でした。
 ―お父さんはどんな人ですか。
 私と弟2人のオムツ替えにしろミルクやりにしろ、母よりも早く気づいたそうで、子どものころは優しくて、よく遊んでくれる父が大好きでした。最近は、私の子育てを手伝ってくれる母の方に軍配が上がりますけど(笑)。父が子煩悩なのは、親族を早くに亡くし苦労したからかもしれません。幼くして母親と弟と妹を交通事故で、父親を工事現場の事故で亡くし、祖父母に育てられたのですが、小学生の時に祖母、定時制高校の時に祖父を亡くし、自分も長くは生きられないのではと思ったそうです。それならば国のために命を捧げようと自衛官になり、昼は勤務、夜は大学に通って勉強を続け自力で卒業しました。
 ―苦労人で子煩悩なお父さんらしい、最近のエピソードは。
 近々5人目の孫が生まれる予定で、仲間内で一番孫が多いと自慢しています。

(道産ヨネ)

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