HOME > 連載【となりの北海道人】『私のお父さん』第7回

連載【となりの北海道人】『私のお父さん』

第7回

*話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■055『熊のコートを母さんにプレゼント』

ツーリー好子さん(43)=会社員、名寄市出身、札幌市在住

 ―釣りにはまっているとか。
 アタリがきたときの、あの感触がたまらなくいいんですよ。猟をやっている父さんの血を感じます。
 ―お父さんはハンターなのですか。
 精肉店の傍ら、趣味で猟をやってたけど、店をたたんでからは、仕事のようにして猟に出てますね。鹿撃ちをしたり、仕事で山に入る人の護衛をしたり、いろいろやっていて、一人で山に入ることも多いです。どんなに疲れていても熊の足跡を見つけると力がみなぎってくるらしく、何十年この方、追い続けてるんで す。だけど、なかなか遇えない。今までに仕留めた熊は、たった1頭。記念すべき1頭だから、毛皮をコートに仕立てて母さんにプレゼントしたんだけど、すっごく重くて、あんまり着てないみたいです。
 ―思い通りにならないものですね。で、お父さんから学んだことは。
 魚にしろ山菜にしろ獣にしろ、とったら食べる。食べ物を余して捨てるなんて言語道断。ごはんを炊いたら釜にも茶わんにも一粒も残さず全部食べます。

(道産ヨネ)

■056『“うちに飯を喰いにこい”が、父の誘い文句です』

内藤千尋さん(27)=アート・ジュエリー作家、苫小牧市出身、苫小牧市在住

 ―お父さんが本をご出版されたとか。
 『森さんちのあれこれ食べごと』(耕社出版刊 税込み1300円)という本です。父はもともとサラリーマンをしつつ小説を発表している小説家でもあるんですが、この本は我が家で父が作っている料理の話です。
 ―お料理をよくされるお父さんなんですか。
 父は料理を人にふるまうのが好きなんです。料理は作るけど、自分はお箸をつけない。周りが“おいしいね”と言って食べているのが嬉しいみたいです。お客さんの年代に合わせて、例えば若い男の子がくるとなるとカレーライスを3日前に仕込んだりしていますね。
 ―幅広い年代の方がお客様としていらっしゃるんですか。
 若い人が多いかな。父は苫小牧で小説講座を持っていたのですが、そこの生徒さんとか。“うちに飯を喰いにこい”が父の誘い文句なんです。お客様との話の輪に私も混ぜてもらって、自分の世界が広がりました。本や美術の話をよくしていましたが、そこで自分が知らないことは知りたくなるし、アートに興味を持つキッカケになったと思います。

(楢戸ひかる)

■057『スポーツマンで物知り。旅行プランも凝っている』

反田亘さん(13)=中学生、札幌市出身、札幌市在住

 ―卓球部に入って毎日練習しているそうですね。卓球の魅力は。
 ラケット一つでいろんな回転がかけられるところ。お父さんともできるし。
 ―お父さんと、よくスポーツをするのですか。
 はい。バドミントン、サッカー、スキーなんかもします。平日は仕事(会社員)で帰ってくるのが遅いから、あんまり顔を見ないけど、休日は男同士で温泉や体育館に行ったり、コンサドーレや日ハムの試合を観に行ったり。家族で慶良間諸島の座間味島(沖縄県)に行ってシュノーケリングをしたこともあります。お父さんは大学生のときに座間味島で合宿したことがあって、きれいな色の魚がいっぱいいる海を僕たちにも見せたかったみたい。沖縄本島の戦争の跡が残るところでは、戦争の話をしてくれました。
 ―いろんなことを教えてくれるステキなお父さんですが、何か注文は。
 酒をよく飲むので量を減らしてほしいです。ずっと元気でいてほしいから。

(道産ヨネ)

■058『“人に喜ばれること”が生きがいの父です』

吉井多美子さん(34)=主婦、札幌市出身、札幌市在住

 ―お父さんは、どんな方なんですか?
 「世の中に悪い人はいない」と、本気で思っている人ですね。とても幸せそう(笑)。大学教授で世間に疎いので、変なものを売りつけられたエピソードは数限りなくあります。でも父は全く気にしておらず…・・・。仕事が趣味で、唯一の興味の対象という感じです。
 ―仕事熱心で出世欲がある方なんでしょうか。
 出世欲はないんじゃないかなぁ。たとえば酪農経営が専門なので指導員として交通手段のないアマゾンの奥地にヘリコプターで行った時のこと。「現地の人が喜ぶから」とボールペンを何ケースも持っていくような人です。人に喜ばれることが生きがいのようです。
 ―「人に喜ばれること」は続けていらっしゃるんですか。
 4年前に心筋梗塞で倒れたんです。仕事も基本的に引退し、1年間くらいはすっかり老け込んで“御老人”でした。でもその病院で知り合った人たちと、「日本で古くなった救急車を発展途上国に贈る」というボランティアをいつの間にか始めて。最近は、いつ実家に電話をしてもいませんね。「お父さん、ただじゃ死なないねぇ」と家族で笑っています。

(楢戸ひかる)

■059『パパのこと……わかんない』

佐藤樹澪さん(5)=保育園児、兵庫県西宮市出身、札幌市在住

 ―パパは、どんな人なの。
 ……わかんない。
 ―パパと何する時が楽しい?
 ……わかんない。
 ―パパ格好いい?
 ……わかんない。
 ―パパとどっか行ったりするの。
 ……わかんない。スキーに言った。コイワ(藻岩山スキー場)。あとねポケモンカード買ってもらった。あのね、りょうまくんっていうお友達がいるんだ。りょうまくんがね、ポケモンカード持っているから僕もポケモンカード欲しいなぁと思ったの。
 ―パパと買いに行ったの。
 うん。お兄ちゃんがプールで合格したから。僕はついでに買ってもらったの。

(楢戸ひかる)

■060『「継がない」とは言わず』

鷲田小彌太さん(64)=哲学者、札幌市出身、空知管内長沼町在住

 ―ご実家が何かご商売をやっていた。
 店やってましたね。いわゆる雑貨屋です。日用品から醤油、味噌なんかの食糧品まで、昔でいうよろず屋みたいに何でも売るとこ。今でいう札幌市厚別区、当時の白石村ですよ。そのころとしてはでかい店で、ずいぶん繁昌してたと思う。家に男の子はひとりしかいなかったから、親父は僕に継がせようと思ってた筈ですよ。僕は継ぎたくなかったけど。
 ―実際、「継いでくれ」と言われたり。
 言われない。こっちも何も言わないで、黙って道外の大学行っちゃった。
 ―あ、自分から「継ぎたくない」とも言わない。
 そりゃ言わないよ。あのね、「結婚してくれ」って言ったらたいてい結婚して貰えないでしょ。それとおんなじで、「継がない」って言ったら「継いでくれ」ってなっちゃうの。そういうもんですよ。あなた結婚は?まだ?じゃあ、これぞという人にはね、言わない方がいいよ。断られるから。

(小笠原 淳)

■061『自分が表現したいビジョンがあるから、やるしかない』

なみんじさん(39)=ミュージシャン、札幌市出身、東京都渋谷区在住

 ―どういった音楽活動をされているんですか。
 サイケデリックトランスバンド「nu step 4 the crowd(ニュー・ステップ・フォー・ザ・クラウド)」のプロデュースや音楽学校の講師、クラブイベントをオーガナイズ(主催)したりしています。
 ―ミュージシャンでいらっしゃるのに、クラブイベントまで主催するのですか。
 スタートはギタリストでした。そのうちバンド全体のプロデュースを始め、次は音楽と一緒に流す映像やそれを提供する空間や時間、客層からフライヤー(招待状)まで気になりだして……。自分が伝えたいことを伝えるために、外に外に興味が向かって行ったんでしょうね。乱暴な言い方かもしれないけれど、ギタリストは“職人”なんです。僕は音楽に関わっている以上、“職人”でなく表現者、つまり“芸術家”でありたいんだと思います。
 ―“芸術家”という生き方、大変そうですが。
 自分が表現したいビジョンがあるから、やるしかないですね。壁にぶつかった時によく思い出すのが父のこと。父はバイオリンをやりたかったけれど断念した。自分は音楽ができる環境にあるんだから、逃げずに親の分もがんばるぞ!という気持ちはあります。

(楢戸ひかる)

■062『ありのままの自分を見せ、道筋を照らしてくれる人』

菅原亜希さん(28)=美容師、札幌市出身、札幌市在住

 ―最近、お父さんとどんな話をしましたか。
 仕事のこととか、孫(弟の子)のこととかですかね。実家に行くと必ず、「まあ、飲め」って感じで乾杯から始まるんです。父は大工で私は美容師。職人同士通じるものがあって、仕事に関しても人生に関しても、ホントいいアドバイスをしてくれるんです。かと思えば、「お前は賞味期限切れだ。またそれぐらいがおいしいんだよ」なんてこと、バンバン言うんですよ(笑)。
 ―とっても仲がいいんですね。
 ええ。父のこと大好きですから。私が9歳、末の妹が3歳のときに母が亡くなり、それまで家で「風呂、飯、寝る」しか言わなかった人が、子どもたちと向き合い、賑やかで明るい家庭を必死で守ってくれました。再婚話は私が反対して以来、一切なし。父の第二の人生を阻んだようで後悔しています。
 ―新たな出会いもあるでしょうし、すでにお付き合いしている人がいるかも。
 いやぁ、どうなんでしょう(笑)。いればいいな……。

(道産ヨネ)

■063『今の自分や生活者としてのスタンス、気に入ってます』

山田康志さん(38)=会社員、恵庭市出身、札幌市在住

 ―お仕事の調子はいかがですか。
 楽しいです。会社の社風によるところが大きいんでしょうけど自分の判断で仕事をすることが多いので、やりたいことやっているという実感があります。ナル シストではないと思っていますが、今の自分がわりと好きなんです(照)。仕事はもちろん、自分が今までやってきたこととか、生活者としてのスタンスなど、 気に入っています。
  ―目下の楽しみはどんなことですか。
 今は家族で何かするのが一番好きかなぁ。キャンプに行ったり山をボブスレーで滑ったり、その程度ですが。子どもが小さいので、本当にささいなことをやってやるだけで喜ぶんです。そういう姿を見たり、一緒に“楽しいね”と言っているのが嬉しいですね。
  ―いいお父さんですね。
 でも息子に怒鳴ることもありますよ。うちの親父は、怖かったんです。居間が僕の持ち物で散らかっていると、威圧的に「早く片づけろ!」と言うような人で。気がつくと僕も同じようなことを言っている。息子は僕のこと怖いんじゃないかな(笑)?

(楢戸ひかる)

このページの先頭へ