HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.7

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人 」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その7

南小樽駅あたりをぷらぷら。ガードレールの向こう側は、観光客でにぎわっている。反響するクリスマスソングで、トンネルの中は、ちょっとしたコンサート気分だった。
角のぐるぐるなんとかってな、店のドアを開けた。にんにくの強い匂いとクリスマスソングが競うように、こんがらがって流れてきた。トントントンとまな板を叩く音が、奥から聞こえる。そのゆったりとしたリズム感は、しなやかなフィーリングを妄想させた。おー天女があやつる音ではないか、てな期待をもたされた。のれんをかきあげてでてきた顔は、たっぷり太った可愛らしい男だった。
羅漢の寺。あの釈迦像をなでまわしている美しい天女を捜そうじゃないの。そんな思いで街中を歩き廻っていたが、キューンと胸を熱くする出逢いはひとつもなく。古い型と言うのか、かなり昔の天女らしき姿をみかけるだけだった。

イラスト「天女さま発射」

テーブルに置かれたスノードーム。ガラス玉の奥でサンタクロースがプレゼントを抱きかかえて、やさしく笑っている。手に取って揺さぶってみると、銀色の雪がきらきら舞いあがり星世界に吸い込まれてしまう。ボーっとしながらコーヒーで熱くなったカップを両手で包む。ほんのりとぬくもりが指先に伝わってきて、光沢の肌をもつ理想の天女に逢えたような気持ちにさせられた。

イラスト「星がキラキラ」

無人の踏み切りをわたって、坂の上の駅に向かった。高台から夕空に抱かれた海が観える。水平線をふさぐように大型のタンカーが横たわっていた。静かだった。光沢の理想の天女に逢えた気持ち。あれが今年のクリスマスプレゼントだった気がした。意味もなく夕陽に向かって走りだした、子供の頃を思い出してしまった。

イラスト「月もキラキラ」

(つづく)

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
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