HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.6

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人 」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その6

米屋さん雑貨屋さん、道をはさんでコンビニが並び、その向かいの角が果物屋さん。その四軒が坂の中腹の交差点を囲むようにある、あと店はないのである。雑貨屋を覗いて驚いた。米屋さんの隣で米を売っているのかヨ? てな不思議さに興味が湧いたのだ。ついでにコンビニも覗く、やっぱり米が売っていた。雑貨屋にあった花壇用の肥料もある。外には、同じように野菜と花の苗鉢も並んでいる。果物屋の店先にも苗鉢はある。そして、バナナの隣には肥料もあったのだ。

イラスト「仏像」

なんじゃコレは、てな複雑な思いで、さらに、その交差点街をうろつく人たちを観ていた。すると、果物屋から買い物袋をさげて出てきたおバさんが、雑貨屋に入ってから、コンビニにも寄っていく。だいたいの人たちが同じ行動をしている。だけど米屋は静かだった。隣の空き地から、真っ白になったタンポポの種が、空に舞い上がり、マジカルな交差点を流れる光景は、美しいのだ。だけど、なんじゃコレ、なんじゃコレ、てなこと考えるたびに、ボクの頭はぽよぽよするのだ。 その辺の複雑な思いを振り切って、さらに坂を登った。幅の広い石段がそびえるようにあって、その上に羅漢の寺があった。石段の上から振り返ると、小樽の街がほとんど観えるほどの、高い坂の上まできてしまった。 その寺の中には、大きな釈迦像を囲むように、いろんな表情をした五百の仏像がぎっしり座っているのだ。はじめはなんとなく、不気味な感じだったり、仏像に噛みつかれそうな恐怖を覚えたりしたが、しだいにおっとりとした空気感に抱かれるような妖しい気分になってしまう。

イラスト「天女と釈迦」

この広い空間に、ひとりでいると、あらゆる空想がふくらんでくるのだ。正面と側面の壁を美しい天女が、タンポポの種のように、ふぁーと空を泳いで、釈迦を撫ぜまわしている。うらやましい光景なのだ。ボクもそーしてほしい。イイな。神様、哀れで汚らしいボクにも、たくさんの天女をください。と、お願いしてみたのだ。 しかし、高台から観てしまう小樽の街は、眩くしっとりとしているのだった。この街のどこかに、天女は、まぎれ込んでいることは間違いない。それを捜そうじゃないの。

イラスト「ふくらむ空想」

(つづく)

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
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