HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.1

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人 」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その1

ひさしぶりの小樽駅。白い漆喰の天井からおりてくる空気の匂いと、ガラスランプの垂下がる窓から、こぼれこむ陽光が、ふんわりした空間を創りあげていた。まわりをみわたすと、陽にやけた皺だらけの老人の顔が微笑んでいたり、しゃがみ込んだ若い男と女が地図を地べたに広げて覗き込んでいたり。

イラスト「陽にやけた皺だらけの老人の顔が微笑んで」

待合広場を出ると、海の香りが漂っていて、麦わら帽子とビニールの浮き輪と水中メガネを持って、子供の頃に行った海水浴の錯覚に紛れてしまう。ふわりんこーんと白い雲が海からの風にのって、そよいでいる。札幌からちょっと足を伸ばすだけで、ピローンとした気持ちを取りもどせる小樽そのものが、ゲー術だと思えてしまうな。

イラスト「ズキュズキュとまぶしい太陽が突き刺す」

駅舎からまっすぐ坂を下って行けば観光ルートの運河に、辿り着くわけだが、もーちっとちがったものに出逢って観たいとの想いで、函館本線をもどるように、南方向に歩く。

イラスト「まったくもってのどかな感じ」

ガードレールの見える交差点を西に登ると、古ぼけた富岡跨線橋に出逢ってしまう。錆びれた手すりにもたれて、下を走る線路を見る。大きな曲がりをつくり南の札幌へと吸い込まれるようにかすれて行く。カモメがクァーと鳴きながら、その線路を横切って天狗山の方に羽ばたいて行く。小樽警察署前の通りで巻尺を伸ばしている警察官ふたりの横を、さりげなく信号無視しているオバサンがいたり、まったくもってのどかな感じがするのだった。

(つづく)

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
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