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新世紀ビジネスの開拓者たち 新世紀ビジネスの開拓者たち The pioneers in the new century
北海道には、IT、バイオ、環境、新エネルギーなど、未来を拓く新ビジネスに挑戦する企業が数多く活躍しています。「可能性の大地」北海道から、新しい開拓者たちの物語をお伝えします。
  連載第6回
 
未利用資源を使って新技術を開発。バイオテクノロジーが北海道の豊富な天然資源を活かす。 取材・文/編集部


【株式会社生物有機化学研究所】代表取締役社長 向井 隆氏 【株式会社生物有機化学研究所】
代表取締役社長
向井 隆氏
(株)生物化学研究所は、大学研究者の技術を事業化する技術移転機関(TLO)として1999年9月に設立された。向井が社長に就任したのは2000年。自らベンチャー企業を立ち上げたという経験を買われ、同社のかじ取りを任された。北大を中心に大学などで研究・開発された技術を北海道発のビジネスとして事業化し、特許などの知的財産権の利用・維持・管理も手がけている。
バイオ産業を育成し、北海道に新たなビジネスを

 北海道は「食糧基地」という言われ方をしてきた。
良くも悪くも、農漁業生産物を出荷する土地であって、そこから新しい産業や価値を生み出すのは、むしろ他の土地だったと言ってもいい。その昔年の構造が、バイオテクノロジーによって変わろうとしている。

 1999年は、北海道拓殖銀行の破綻の記憶もまだ生々しい年だった。北海道再生への強い思いが道民のなかに静かに広がっていたこの年、北海道の豊富な資源をバイオテクノロジーに活用し、新しい産業を創出することを目的に、「生物有機化学研究所」が設立される。
そのきっかけとなったのは、北海道大学大学院理学研究科・西村紳一郎教授を中心に世界をリードする研究が進められ、「次世代ポストゲノム」として世界的に注目されている「糖鎖工学」だった。

 糖鎖とは、数種類の単糖(たとえばブドウ糖のように炭素・水素・酸素が結合したもの)が複数個結合した物質のことで、遺伝子が作り出すタンパク質や脂質などと結合して、その働きを制御する役割を持っている。
 現在では、糖鎖はウイルスへの感染、ガン細胞の転移などにも関係し、人の細胞の生死など生命の秘密の鍵をにぎるものだということが分かってきており、その応用分野も、医薬品、機能性食品、新素材、ナノテクノロジーなど幅広く、また特許出願の半数以上が日本人によるものという、日本が最も研究が進んだ優位性を持っている。
 そのなかでも西村教授の研究は、オリジナルの糖鎖合成装置の開発や魚の不凍物質 と関係する糖鎖を発見するなど、世界の最先端のものとなっている。2002年6月には 産業技術総合研究所北海道センターに、西村教授を中心とした糖鎖工学研究センター が作られた。さらに来年夏には、北海道大学に糖鎖工学などの研究拠点となる「次世 代ポストゲノム研究所」が作られるなど、札幌に研究拠点が形成されつつある。

先端技術研究所が製作した超小型人工衛星 生物有機化学研究所は、こうした大学研究者の技術を事業化する技術移転機関(TLO)であり、研究チームのバックアップと応用技術の開発・製品化に力を注ぐバイオベンチャーとして誕生した。
 代表取締役社長の向井隆は語る。
「西村先生や研究者の方々には糖鎖工学の研究に専念してもらいたい。それをどんな分野に応用し、どんな製品を開発し、どうやってビジネスにつなげていくかは我々が考える」
 バイオテクノロジーの研究には最先端の分析・解析装置と、高度な情報処理技術が不可欠である。そのため同社では最新鋭の分析機器などを導入し、11名の研究員が所属する研究開発部は国内でもトップレベルの研究開発体制を完備している。
「IT企業の集積地である札幌はバイオベンチャーにとって地の利がある。ここで生み出されたさまざまな製品を、本州や海外へ提供し、北海道の新たな産業として成長させていきたい」
 向井のその言葉には、新しい北海道の産業が生まれていく現場に居合わせているという、強い決意を感じさせるものだった。

 
















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