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新世紀ビジネスの開拓者たち 新世紀ビジネスの開拓者たち The pioneers in the new century
北海道には、IT、バイオ、環境、新エネルギーなど、未来を拓く新ビジネスに挑戦する企業が数多く活躍しています。「可能性の大地」北海道から、新しい開拓者たちの物語をお伝えします。
  連載第4回
 
植物の生育を助ける新種の微生物が、世界の農業を変え、砂漠に緑を取り戻す。


【株式会社北海道グリーン興産】代表取締役社長 佐々木 進 氏 【株式会社
 北海道グリーン興産】
代表取締役社長

佐々木 進 氏
北海道グリーン興産はゴルフ場の芝の管理を専門とする企業として設立。1990年、土壌改良研究のために使用していた植生試験場で植物の活性化に役立つ微生物を発見、これを機にバイオテクノロジーの分野へ進出した。10年に及ぶ研究開発の末に完成したアグロミック生菌剤は、米やとうもろこしなどの農作物全般から樹木、花きまであらゆる植物に有効な生育活性促進剤として、国内はもとより海外からも熱い注目を集めている。
微生物との出会いからバイオベンチャーへの転身を決意

微生物 土壌 イメージ 「うちの菌はね、素晴らしい力を持っているんだよ」。
 まるで我が子を自慢するかのように顔をほころばせて語るのは、株式会社北海道グリーン興産社長の佐々木進である。
 その菌とは「トリコデルマ・ハルジアナム・リファイS・K-5-5」という名を持つ、土中に生息する微生物である。佐々木が、この小さな生き物と出会ったのは今から12年前、十勝管内清水町の静かな山林の中だった。

 北海道グリーン興産は、ゴルフ場の芝の育成や土壌改良などを手がける会社としてスタートした。設立1986年、バブル景気の勢いに乗り道内各地でゴルフ場が建設されていた頃だった。当時、北海道ではゴルフ場の芝に農薬を使わないよう指導しており、佐々木は無農薬の土壌改良剤や芝の育成技術を独自に開発し、順調に業績を伸ばしていた。
 90年の秋、土壌改良の研究に使っていた清水町の植生試験場の一画に、ひときわ生育の良い芝が現れた。何か特別な原因があると直感した佐々木は、土を持ち帰り、研究機関へ分析を依頼。その結果、芝の生育を促進させていたのは土中の菌で、しかも既知の菌のどれとも一致しない新種であることが判明した。
 この「トリコデルマ・ハルジアナム・リファイS・K-5-5」を、発見者である佐々木は「アグロミックS・K-5-5」の名で商標登録し、さらに日本とアメリカで特許も取得した。
植物の生育を促進 イメージ アグロミックは植物の根の付近で増殖し、特殊なアミノ酸を作り出す。それが根の養分吸収力を向上させ、植物の生育を促進させるのである。芝以外にも稲やとうもろこしなどの穀物、いも類、野菜などあらゆる農作物に効果があり、収穫量が10%〜50%増量するうえ、糖度・うまみなどの食味も向上することが分かった。
 「アグロミックは、日本の農業に革命的な変化をもたらすに違いない」と確信した佐々木は、菌を大量培養し、植物の生育活性促進剤として製品化することを決意。大阪市内に研究所を開設し、以前から交流のあった微生物の専門家を招いて本格的な研究開発に着手した。それは10年の歳月と13億円の費用を投じたプロジェクトの、ほんの始まりに過ぎなかった。

アグロミックS・K-2-1  トリコデルマ系の菌類は環境の変化に左右されやすく、培養するのが難しいといわれている。なかでもアグロミックは非常にデリケートな性質を持ち、温度や湿度、酸素の量などのわずかな変化にも敏感に反応した。元気に活動していたはずの菌が一晩で全滅してしまうこともあった。安定的に大量生産できる培養技術の開発は困難を極めた。
 一方、ばく大な研究開発費をいかに捻出するかという問題も重くのしかかってきた。折しもバブルが崩壊し、ゴルフ場建設の激減とともに本業である芝の育成事業も失速。「このままでは、会社もアグロミックも失ってしまう」と危惧した佐々木は、大胆にも本業を切り捨て、アグロミックの開発に専念することを選んだのである。
 当時、佐々木が何をしようとしているのか、誰も理解できなかったという。それでも、佐々木はアグロミックの力を信じていた。試験栽培では稲やじゃがいも、トマトなどが目覚ましい成果を挙げ続けていた。
 「培養技術さえ完成すれば必ず成功する」。
 豊かに実った稲穂を手に、佐々木は確信を深めた。
 













2001年度 北海道産米 アグロミック 栽培米



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