
いまや旭川市の旭山動物園の人気は飛ぶ鳥を落とす勢いで、書店の棚にも旭山動物園ものがひしめいている。10年前から旭山動物園の楽しさを伝道してきた立場からするとうれしいかぎりである。
しかし、その人気の影で、低迷している動物園もたくさんある。
もちろん予算もなく、昔ながらのやり方で、老朽化したり、革新的ではなかったりと、低迷する理由はあるだろう。しかし、そもそも動物園とは何か、それがなぜ地域に必要なのか、という議論がなければ、単なる不必要な施設として葬られていくだけだ。
旭山動物園でさえ、赤字閉園の寸前だったのである。
北海道を代表する動物園には、もうひとつ札幌市の円山動物園がある。ここもまた入園者の減少に悩んでいるが、本書は、その円山動物園を舞台にした絵本である。
ものがたりは、円山に住むおばけのマールが、ある夜まちの明かりにさそわれて、円山動物園を訪れ、シマフクロウ、キリン、ライオンや飼育員のおじさんと出会う。どこか、お化けのキャスパーを思い出させるような、マールを主人公とした幼児向けの絵本になっている。
動物園は、博物学の生きた標本であり、知識や情操を育てる教育の場であり、市民の憩いの場である。動物のもつ癒し効果はよく知られており、子供からお年寄りまで、たいせつな場所なのである。
とりわけ円山動物園は、札幌市が経営する市民のための動物園である。ならば、市民にとって自分たちの理想の動物園をつくることは、市民の責任とはいえないだろうか。
円山動物園には、ゴリラや、アムールトラや、プレーリードックや、本書にも登場するたくさんの動物たちがいる。
さあ、動物園に行こう。
子供を連れて、若いカップルで、老夫婦で――。
理想の動物園づくりは、そこから始まる。 |