
アフリカという土地に、私たちはどのようなイメージをもつだろうか。
野生動物、戦争、貧困、差別、飢餓――ステレオタイプのイメージが浮かんでは消えていく。
「絵はがきにされた少年」というタイトルを眺めたときにも、アフリカ特派員という著者の肩書きを見たときにも、白人に虐げられた黒人少年のイメージ、ユダヤ人のホロコーストや、ゲリラ戦士に強制的にリクルートされた少年兵のイメージがよぎった。
いつもならおそらくここで、本を開くこともなかっただろう。
本書の著者は北海道大学工学部出身という、変わった経歴をもつジャーナリストである。本書は、本年度の開高健ノンフィクション賞を受賞した。
本書のなかの「絵はがきにされた少年」とは、少年時代にクリケットで遊んでいたところを写真に撮られ、成人してその写真の絵はがきを手に入れた老人のことである。
求められる差別と貧困のアフリカというイメージに対して、老人の思い出話はことごとく普通のものである。
そこにいるのは、イギリス植民地時代の犠牲者ではなく、つつましやかに、自らは何ももとめない、穏やかな老人である。そして、老人と、いやアフリカの人々と、西洋人や私たち日本人を分かつものが何かという哲学的根源に、老人は突然触れる。(それが何かはぜひ本書をお読みいただきたい)
読み進むほどに、偏見や思いこみによるステレオタイプのアフリカではなく、普通の人々(オーディナリーピープル)のアフリカの姿に、胸が打たれる。
あのルワンダのフツ族とツチ族の史上最悪の虐殺にしても、その虐殺に加わった人間のなかに、残虐な殺し屋などではなく、「大虐殺の原因は他人に対する無知と偏見です」と語る元大学教授がいたことを紹介する。
「殺し合い。それは風のようにやってくる。雪のようには来ない」―ひとりの老人のこの言葉を、私たちはどう聞けばよいのだろう。 |