
だいぶ以前になるが、『石狩川治水史』という大部の一冊を読んで、「土木」とはなんとロマンと物語に満ちた世界なのかと、驚いたことがある。もちろん土木には、自然を不必要に歪める側面もある。しかし、それまでの土木に感じていた一方的なイメージが揺らぐきっかけになった一冊だった。
その後、ダムの建設現場を訪ねたり、道路技術者の方の話を聞いたりするなかで、「土木」の面白さ、奥深さに触れることになった。北海道が、日本の土木史のなかで、燦然と輝く歴史をもつ地域だということも知った。
地震や水害に多くの人々が悲嘆にくれるのを目の当たりにすると、土木とは、人間の幸福のための技術であると、つくづく分かる。土木技術とは、ゆめおろそかにできない、わたしたちの大切な財産なのである。
本書は、その文脈につらなる。
開拓使時代から現代につづく北海道の「道」の歴史、「道路」の技術のすがた、道路の未来へのアプローチが語られ、なによりもそこに息づく人の物語が織り上げられる。
北海道が発展するために、どれほどの「道」が必要だったのか。そのために、どれだけの道路技術者が不可能に挑戦したのか。とりわけ氷雪と寒冷にさらされる北海道の冬との、どれほどの壮絶なたたかいがくりひろげられたのか。
その先人たちの努力があって、わたしたちは、冬も快適に、まちからまちへ移動することに不都合を感じない。少し前まで、冬期間には「陸の孤島」になる地域があったことなど、嘘のようである。
工場と港湾、農村と都市を結ぶ「機能としての道」は、いま新しい時代の繁栄、すなわち文化や遊行にかかわる「美しい道」へと変化している。
すべての道はローマにつづくという言葉がローマの繁栄のシンボルだったように、すべての道が人々の心につづくことが、新しい北海道の繁栄だということも、本書は教えてくれる。 |