本◆北海道を知る100冊 北海道人トップページへ
<100>佐藤正午 著 『象を洗う』
『象を洗う』佐藤正午 著

『象を洗う』
佐藤正午 著
岩波書店 刊
2001年12月 発行
本体 1600円
ISBN4-00-023702-0

 
◎丁寧に象を洗い続ける作家の、洒脱な一文で100冊は終わる

 北海道を知る100冊が、ようやく100冊目を迎えた。
 これまで北海道について書かれた本、北海道にゆかりのある人が書いた本を紹介し続けてきたが、100冊目をどの本で締めるか、ずいぶん悩んだ。
 なにしろ、三浦綾子も、原田康子も、渡辺淳一も、札幌在住の藤堂志津子や志水辰夫も、直木賞を受賞した京極夏彦も、とりあげていない、のである。積み残した本もたくさんある。悩むこと三日、書棚にあった佐藤正午のエッセイ集に手をのばした。
 
 1983年にすばる文学賞を受賞した『永遠の1/2』で小説家デビューした佐藤正午は、1974年から79年までの約5年半、北海道大学で学生生活を送った。札幌の5年半は、ひたすら本を読むことに費やされた。彼はそのころのことを、本書のなかの「学生時代」という一文に書いている。
 「次々に手に取る本が新鮮で、衝撃的で、むさぼるように読み続ける、そんな幸福な若い時代は(そうしたくても)二度と取り戻せない」
 佐藤正午のエッセイは、職人の技がきいている。
 ユーモアとペーソスに富んだ語り口のなかから、突然胸がつまるような一文が飛び出してくる。
 本と自分との幸福な時代は過ぎ、今は余生にすぎないのか、と中年から老境へと向かう多くの読書人たちは自問するのである。
 
 書名の「象を洗う」とは、「小説を書く」という行為を指す、彼が作った隠語である。
 世の中には、雑な洗い方をした象が氾濫し、しかも売れている。この風潮をチクリと揶揄しながら、佐藤は、まちがいなく、丁寧に象を洗い続けている。

バックナンバー
100 佐藤正午 著
『象を洗う』
099 永倉新八 著
『新撰組顛末記』
098 村上 龍 著
『希望の国のエクソダス』
097 石川啄木 著
『啄木歌集』
096 小林英樹 著
『色彩浴』
095 三國清三 著
『料理の哲学』
094 斉藤征義 著
『宇宙船売却』
093 きらん出版会 編・刊
『きらん 魅惑の室蘭・胆振ガイド』
092 井内佳津恵 著
『田上義也と札幌モダニズム』
091 村上春樹 著
『羊をめぐる冒険』上・下
090 『faura』
089 新穂栄蔵 著
『ストーブ博物館』
088 司馬遼太郎 著
『街道をゆく38 オホーツク街道』
087 『北海道かるた 方言編』
086 池澤夏樹 著
『静かな大地』
085 小檜山博 著
『出刃』
084 大崎善生 著
『聖の青春』
083 『女性史研究ほっかいどう』
082 松原 仁 著
『鉄腕アトムは実現できるか?』
081 沢木耕太郎 著
『沢木耕太郎ノンフィクション4 オン・ザ・ボーダー』

061-080
041-060
021-040
001-020