本◆北海道を知る100冊 北海道人トップページへ
<97>石川啄木 著 『啄木歌集』
『啄木歌集』石川啄木 著

『啄木歌集』
石川啄木 著
 岩波文庫 刊
1993年5月一刷発行
本体 760円
ISBN4-00-310541-9

 
◎啄木の歌に深い刻印をのこした北海道の風と土と人

 先日、久々に石川啄木の歌集を手にとった。
 三行にわかち書かれたすべての歌を、一気に、心のなかで声をあげて読んだ。
 若いころには浅薄なセンチメンタリズムでしかふれられなかった彼の歌が、単なる抒情ではない、深いリアリティをもって迫ってきた。

 なつかしき冬の朝かな。
 湯をのめば、
 湯気がやわらかに、顔にかかれり。  (『悲しき玩具』より)

 啄木は、1886年に岩手県に生まれた。少年時代から天才的な詩人として知られるが、生活苦から故郷を離れ、1907年に北海道にわたる。函館から札幌、小樽、釧路と転々とし、約1年で離道する。東京で作家活動を行うが、貧困のなか、12年4月26歳で世を去る。まさに夭折といっていい。遺骨は東京浅草等光寺の墓地に葬られた。
 その遺骨がなぜ、わずか132日間しか滞在しなかった函館に持ち帰られ、立待岬にある啄木一族の墓に葬られたのか、という経緯については、函館在住のジャーナリスト、故・小野寺脩郎が、遺稿『啄木の骨』(幻洋社刊)に描いている。
 処女歌集となった『一握の砂』のなかの一章「忘れがたき人人」は、北海道の生活と情景を歌ったものである。わずか1年の北海道の生活だったが、北海道の風と土と人は、啄木の歌に多くの情景を宿し、そのことで多くの人々の心に、その詩情を焼き付けることとなった。
 
 札幌に
 かの秋われの持てゆきし
 しかして今も持てるかなしみ
 
 神のごと
 遠く姿をあらわせる
 阿寒の山の雪のあけぼの  (『一握の砂』より)
 
 誰もが知っている歌ばかりではなく、啄木が感じた北海道の風と土と人の思いに、ぜひふれてみてほしい。

バックナンバー
100 佐藤正午 著
『象を洗う』
099 永倉新八 著
『新撰組顛末記』
098 村上 龍 著
『希望の国のエクソダス』
097 石川啄木 著
『啄木歌集』
096 小林英樹 著
『色彩浴』
095 三國清三 著
『料理の哲学』
094 斉藤征義 著
『宇宙船売却』
093 きらん出版会 編・刊
『きらん 魅惑の室蘭・胆振ガイド』
092 井内佳津恵 著
『田上義也と札幌モダニズム』
091 村上春樹 著
『羊をめぐる冒険』上・下
090 『faura』
089 新穂栄蔵 著
『ストーブ博物館』
088 司馬遼太郎 著
『街道をゆく38 オホーツク街道』
087 『北海道かるた 方言編』
086 池澤夏樹 著
『静かな大地』
085 小檜山博 著
『出刃』
084 大崎善生 著
『聖の青春』
083 『女性史研究ほっかいどう』
082 松原 仁 著
『鉄腕アトムは実現できるか?』
081 沢木耕太郎 著
『沢木耕太郎ノンフィクション4 オン・ザ・ボーダー』

061-080
041-060
021-040
001-020