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<96>小林英樹 著 『色彩浴』
『色彩浴』小林英樹 著

『色彩浴』
小林英樹 著
 ポーラ文化研究所 刊
2003年10月発行
本体 1,800円
ISBN4-938547-70-8

 
◎色彩をめぐる、美しい思索をつづるエセー

 本書を探して書店のなかをうろうろした。
 「データでは在庫ありになってるんですけどね」と書店の人はいう。
 たぶん美術書のコーナーか、それとも哲学のコーナーかとあたりをつけて歩くが、どこにもない。あっと思って、資格コーナーのカラーコーディネータの棚を見てみると、そこに本書が収まっていた。
 確かにわからないわけではないし、カラーリストを目指す若者たちの目にとまってほしいとも思うのだが、本書の色彩と美への深い洞察が、資格コーナーにあるのは、どうだろう。

 著者の小林英樹は、札幌にある北海学園大学の教授。
 同氏は、ゴッホの作品の贋作と自殺の真相をめぐるノンフィクション『ゴッホの遺言』(情報センター出版局)で、平成12年度日本推理作家協会賞(評論その他部門)を受賞し、注目を浴びた。ゴッホ研究家ではなく、画家としての自由な視点と発想からゴッホに迫った著作は、この後『ゴッホの証明』(情報センター出版局)『耳を切り取った男』(NHK出版)とつづく。
 本書は、そんな著者が、色彩と真っ向から向き合い、思索し、つづったエッセー集である。エッセーといえば最近ではタレント本の常道で、折々の気持ちを書きとめる、どこか軽い〈随筆〉のイメージが強いが、モンテーニュの〈エセー〉をひくまでもなく、もともとは「思索」を書き留めたものである。その意味で、本書は色に関する「思索録」〈speculations〉といっていいかもしれない。

 この本のなかに、北海道のことがいくつか書かれている。
 春の芽生え、札幌の精進川の千島桜、噴出する夏の緑、街に霞んだフィルターをかける雪。その季節の移ろいを眺めながら、著者は北海道の色をこう書く。
「ここには高緯度の北国にしかない澄明な空気と淡い色彩がある」
「わたしはこの街に住みながら、この街の中心にある色を明るめの中間色と思っている。家も車も人も、基調になるのはパステルカラーのような明るい中間色だ」
 四季のなかで、もう少し北海道の色を、感じてみようと思う。

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