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<94>斉藤征義 著 『宇宙船売却』
『宇宙船売却』斉藤征義 著

『宇宙船売却』
斉藤征義 著
 響文社 刊
2003年7月発行
本体 2,000円
ISBN4-87799-018-6

 
◎詩のことばに、宇宙のひびきを聴く

 北海道の穂別町という小さなまちで、詩人・斉藤征義は、役場の職員をしながら、宮沢賢治の理想郷づくりをしたり、詩の朗読をしたり、町民ミュージカル映画を作ったり、はては囚人役で映画に出演したり〈共演は窪塚洋介らしい〉、している。アクティブな地域活動者として、その名はよく報道され、知られているが、その詩を読んだことがある方はどれほどいるかというと、いささか心許ない。

 詩人・斉藤征義は、やはりまちがいなく詩人であったか、
と誰もが、その真実に気づくためには、一冊の詩集が必要である。
 宮沢賢治は未来圏からの風を詠んだが、私たちはこの『宇宙船売却』という詩集を手にして、詩人の風のようなことばに触れることができる。

  したたりおちる口紅に 細い糸をひいて
  遠い惑星から 口移しの水を飲む

  ぼくの地球のベッドは
  きょうも軋み
  軋み
  もうすぐ冬になる     〈「球形の水」より〉

 斉藤征義の詩は、宇宙的である。星雲や星々、地球、動物、植物、人間のイメージが、「くねくね」とひろがる。私たちはそのイメージにみちびかれ、「水が消え」「海が消え」た宇宙の有り様に出会うことになる。それを「環境保全」という紋切りな言葉で語ってしまうと、どうも浅薄になってしまう。それはもっと、人間の「内奥」にあるものであり、詩人の言葉を借りると「星の位置」に関するものなのだろう。

  樹氷の氷解するとき
  星は わたしの指先に いろづく   〈「星の位置」より〉

 ぜひこの珠玉の言葉の群れにふれていただきたい。

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