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<91>村上春樹 著 『羊をめぐる冒険』上・下
『羊をめぐる冒険』上・下 村上春樹 著

『羊をめぐる冒険』上・下
村上春樹 著
 講談社文庫
 1985年10月発行(文庫版)
 本体 各巻448円
ISBN4-06-183606-4(上)
ISBN4-06-183607-2(下)

 
◎日本のどこにもない都市をモチーフに生まれる幻想のものがたり

 札幌を「異国」と表現した作家は多かった。
 イラストレーターの真鍋博は、飛行機が空港に降り立つ前の家々の赤や青のペンキの屋根に「日本」ではない場所を見た。
 司馬遼太郎も、札幌を日本でも希有な「都市」であると書く。
 「都市における都市性というのは、多少の気取りで成立している。街路を歩くひとびとは、舞台を歩く俳優のように多少は気取ってもらわなくてはならない。札幌には、それがある」(『オホーツク街道』)
 計画的につくられた都市のモダニズムが、札幌を日本ではない場所にしているのかもしれない。

 村上春樹が、札幌を舞台にしつづけたのも、リアルに存在しながら、リアリティがない、幻影的な場所としてうってつけだったのだろう。
 『風の歌を聴け』でデビューした村上春樹は、『1973年のピンボール』、そしてこの『羊をめぐる冒険』と、いわゆる三部作とよばれる一連のシリーズで、新しい日本の文体を生み出したとまで評価される。
 『羊をめぐる冒険』で、「僕」と「彼女」は札幌を訪れる。
 喫茶店でコーヒーを飲み、映画館で犯罪ものとオカルトの二本立ての映画を見て、夕暮れの街を散歩する。
 「彼女」はこう訪ねる。―私たち、本当に正しい街にいるの?
 「何かがずれているような気がするの」
 「はじめての街というのはそういうものなんだよ。まだうまく体がなじめないんだ」
 彼らは、レストランに入り、生ビールと、ジャガイモと鮭の料理を食べ、そして電話帳で見つけた「いるかホテル」に泊まる。
 この札幌の「いるかホテル」というモチーフは、その後の作品でも重要な場所として登場する。

 希薄な空気感に包まれたこの街には、「ずれていく感覚」がよく似合う。
 『羊をめぐる冒険』が書かれたのは1982年。この20年で札幌はどのように変わっただろうか。

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