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<89> 新穂栄蔵 著『ストーブ博物館』
『ストーブ博物館』新穂栄蔵 著

『ストーブ博物館』
新穂栄蔵 著
 北海道大学図書刊行会 刊
 1986年10月発行
 本体 1,400円
 ISBN4-8329-2181-9

 
◎石炭ストーブへの郷愁をかきたてるストーブ百科

 晩秋になり、もうわが家でも朝晩、ストーブを焚いている。
 というと、本州以南の方は驚かれるかもしれないが、北海道では常識である。

 今は、スイッチひとつで寝ていても火がつく石油ストーブだが、ほんの3〜40年前は、石炭ストーブが普通だった。石炭ストーブをに火を入れるにはコツがある。新聞紙と付け木を入れ、その上に細かい石炭の屑を入れ、徐々に大きな固まりにしていく。上手に火を焚けるようになると、なんだか一人前になったような気がして誇らしかった。
 石炭ストーブは、風向きによっては、家の中に灰が逆流することもあった。いきなり「ボン」という音がして、「爆発」するのである。
 ストーブのそばには、デレッキという鉄製の火掻き棒と、十能という小型のスコップがつきものだった。デレッキで灰を掻き落とし、十能で石炭をくべるという三点セットだった。子供たちが悪さをすると、オヤジがデレッキでゴツンと叩くなどということもよくあった。
 今の子供たちに、この雰囲気を伝えるのは難しい。
 大人は家で火を支配していた。ストーブの前には父親がデンと座り、ストーブの周りに家族が集まって、火を囲んで暖をとった。大人が火を支配することをやめ、機械にまかせるようになって、家族が変わったような気がするのは、私だけだろうか。そういえば、給料袋がなくなり、銀行振込になって、お父さんの権威が喪失したというのにも似ているかもしれない。
 
 前置きが長くなったが、北海道には欠かせないストーブの文化だが、ストーブについて書かれた本はほとんどない。本書は、「わが国では最初の」ストーブの本であり、その歴史から構造まで、幅広く記されたストーブの百科である。
 ストーブに関して何か記事を書いたり、番組を作ったりする場合のネタ元は、ほとんど本書である。この著者がいなければ、これだけの歴史に残る仕事は、誰もなしえなかっただろう。
 この価値は、北海道だけのものではないと、思うのだが。

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