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<88> 司馬遼太郎 著『街道をゆく38 オホーツク街道』
『街道をゆく38 オホーツク街道』司馬遼太郎 著

『街道をゆく38 
オホーツク街道』
司馬遼太郎 著
 朝日文庫
 1997年2月発行
 本体 600円
 ISBN4-02-264136-3

 
◎謎の海洋民・オホーツク人を探す旅へ

 この連休、久方ぶりにオホーツクを歩いた。
 お供にしたのは、いうまでもなく司馬遼太郎『オホーツク街道』である。

 オホーツク沿岸のイメージは、荒涼とした流氷の風景にいろどられている。短い夏には、輝く海と、野にあふれる花々という明るい印象があるのだが、冬が近づくと、とたんにイメージは暗くなる。今回も、たしかに鬱蒼とたれこめる雲と、錆びた色の海が、晩秋の寒々しい光景をかもしだしていた。

 しかし、いくつかの博物館を回ると、そのイメージは大きく変わる。
 オホーツクの冬とは、実に「豊穣の冬」なのではないか、と思うようになるのだ。
 流氷が育てる多くの魚たち、流氷とともにやってくる多くの海獣たち。そして、それとともにオホーツク海をこえて、やってきた謎の民・オホーツク人。
 網走市、常呂町などの博物館では、そんなオホーツク人たちの残した、さまざまな足跡と出会える。灰色の暗い土器、海獣の牙でつくった熊や女性の像、それまでの日本の竪穴式住居とは趣を異にする住居。
 8世紀からオホーツク沿岸に漂着し、礼文島、さらに奥尻島にまで到ったオホーツク人は、サハリン(樺太)や大陸にルーツをもつ海洋民であり、13世紀に忽然と姿を消す。
 そのルーツや消滅の経緯、擦文人、アイヌ民族との関係など、あまり謎が多いことから「謎の海洋民」とも呼ばれているが、ただ間違いないことは、彼らが海の向こうからやってきた民であり、一見行き止まりの辺境に見えるオホーツクという地が、実は世界に向かって開かれた場所であったということである。

 司馬遼太郎は、「街道をゆく」のシリーズのなかで、この「オホーツク街道」をテーマにした。
 そこには、考古学に熱狂した司馬少年の面影や、戦車乗りの兵士として大陸を見た彼の姿がある。司馬は、オホーツク人という謎の民の存在に、作家的好奇心を燃え立たせ、はるか大陸との往来に思いをはせた。そしてシリーズのなかでも傑作のひとつと評価の高い本書が生まれたのである。

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