| ここでもとりあげた札幌在住の渡辺一史さんの『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社刊)が、講談社ノンフィクション賞を受賞したというニュースがとびこんできた。
実は、講談社ノンフィクション賞は、平成12年度のドウス昌代『イサム・ノグチ 宿命の越境者』、13年度の大崎善生『将棋の子』、14年度斉藤道雄『悩む力』、そして15年度が『こんな夜更けにバナナかよ』と、4年連続で北海道関連の本や著者が受賞したことになる。
このなかで、本コーナーでこれまで唯一紹介していなかったのが、大崎善生である。
大崎善生は、札幌市生まれ。将棋連盟に入職し、十数年にわたり雑誌『将棋マガジン』の編集者や『将棋世界』の編集長として、棋士や棋界を見続けてきた。そこから生まれた作品が、上記の『将棋の子』であり、そして彼のデビュー作である本書『聖の青春』である。
大崎善生は、この『聖の青春』で鮮烈なデビューを飾り、第13回新潮学芸賞を受賞。初の小説作品『パイロットフィッシュ』では吉川英治文学新人賞を受賞するなど、数々の賞にかがやいている。
本書は、平成10年、29歳の若さで亡くなったA級棋士・村山聖(むらやまさとし)の短く熾烈な生涯を描いたノンフィクションである。村山は、幼くしてネフローゼを患い、病とたたかいながら、病院のベッドで将棋を覚える。中学生で真剣師として知られた小池重明を破るなど、少年時代から怪童として知られるようになる。病を抱えながら、親元を離れ、森信雄の内弟子となり、奨励会の段位を上り詰めていく。
羽生善治など若手の出現で激動する将棋界。そのなかで、ただひたすら極限まで、勝つことに自分の生を燃やす村山聖と、彼を見守る森信雄の深い師弟愛。その物語は、やがて村山の死というクライマックスへ向かっていく。
読み終えた後に誰もが深い感動に包まれるにちがいない。
大崎善生のストーリーテラーとしての力は、この処女作に見事に結実している。
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