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<83> 『女性史研究ほっかいどう』創刊号
『女性史研究ほっかいどう』創刊号札幌女性史研究会

『女性史研究ほっかいどう』創刊号
 札幌女性史研究会
 2003年8月 発行
 定価 1,000円

 
◎もうひとつの視点からの北海道史

 もう10数年前になるだろうか。
 当時100歳をこえていたお婆ちゃんの生い立ちの聞き取りをしたことがある。5歳で両親と共に北海道に渡ってきた彼女は、うっそうと森が広がる開拓地に入植し、そこで成人した。明治20年代の開拓地を伝聞ではなく、一人称で実体験した話を聞くことができたのは、後にも先にもそれだけである。
 お嫁に行くときは、馬そりに乗って、凍結した石狩川に作った「氷橋」を渡ったそうだ。嫁ぎ先に急ぐ途中、何度も村の若者たちにじゃまをされ、そりをひっくり返されたという。当時はそういう風習がまだ残っていたようだ。思い出すうちに、次第に感極まって、涙ながらの取材になったが、そのつらい思い出とは開拓の厳しさではなく、お姑さんとの確執だった。同じ開拓の話をうかがっても、男性と女性では、かくも感じ方が違うのかと、そのとき思った。
 
 創立25周年を迎える札幌女性史研究会が、会誌『女性史研究ほっかいどう』を創刊した。
 札幌女性史研究会は、これまで市井の女性たちの「証言」の聞き取りなど、さまざまな活動を行ってきたが、この会誌でも戦時下の炭鉱での「労務慰安婦」の問題に光を当てるなど、北海道の歴史を考える上で、重要な資料となっている。
 歴史を語るとき、男の視点からのものが圧倒的に多いことは事実である。それは自然に歴史の一部を欠落させてしまう。だから女性の視点からの歴史記述が必要だということは言うまでもない。歴史を女性の視点や少数民族の視点から組み直して見ることは、歴史の多様性を理解する上でも大切なことだ。
 しかし同時に、歴史研究においては常に史実と史観の問題がつきまとう。特定のイデオロギーや史観にとらわれて客観性を失うと、逆の意味での欠落した歴史になってしまう。その点、本誌論文の精度は高く、評価できるものになっている。ぜひ次号も楽しみにしたい。

バックナンバー
100 佐藤正午 著
『象を洗う』
099 永倉新八 著
『新撰組顛末記』
098 村上 龍 著
『希望の国のエクソダス』
097 石川啄木 著
『啄木歌集』
096 小林英樹 著
『色彩浴』
095 三國清三 著
『料理の哲学』
094 斉藤征義 著
『宇宙船売却』
093 きらん出版会 編・刊
『きらん 魅惑の室蘭・胆振ガイド』
092 井内佳津恵 著
『田上義也と札幌モダニズム』
091 村上春樹 著
『羊をめぐる冒険』上・下
090 『faura』
089 新穂栄蔵 著
『ストーブ博物館』
088 司馬遼太郎 著
『街道をゆく38 オホーツク街道』
087 『北海道かるた 方言編』
086 池澤夏樹 著
『静かな大地』
085 小檜山博 著
『出刃』
084 大崎善生 著
『聖の青春』
083 『女性史研究ほっかいどう』
082 松原 仁 著
『鉄腕アトムは実現できるか?』
081 沢木耕太郎 著
『沢木耕太郎ノンフィクション4 オン・ザ・ボーダー』

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