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<17>はた万次郎 著『ウッシ−との日々』1〜7 バックナンバー
『ウッシ−との日々』1〜7 はた万次郎 著 ◎過疎の方がいいじゃないか、と思えてくる「田舎生活」の物語
 1992年、漫画家・はた万次郎画伯は、道北の小さな町・下川町にやってきた。
 東京から北海道に移住するために、あちこち走り続けた末にやってきた下川町。
 「よし、この町に住むぞっ!!」と、思ったのは、観光地でもない「過疎」の町だったからだ。
 農家の空き家を見つけ、家賃3500円で下川町の人となったはた画伯のもとに、一匹の犬がやってくる。白い体に黒いブチ。牛のようだったところから付いた名前がウッシー。はた画伯とウッシーとの日々がここから始まるのである。
 
 本書は、ウッシーと猫と画伯の、そんな下川町の「田舎生活」を描いたマンガである。
 はた画伯の独特の味わいを持つ筆致は、一度はどこかで目にしている方も多いのではないだろうか。
 キタキツネやエゾシカも、長い冬や雪の生活も、最初は珍しかった北海道の田舎暮らしも、慣れてしまえばあたり前になってしまう。考えてみればそんなものは上っ皮のものにすぎない。そこからが本当の楽しさを発見である。山スキーや渓流釣り、海釣り、バードウオッチング、山菜採り、ただの散歩だって楽しい。なにしろ本当に人が少ないのだ。大自然独り占めとでもいうような、なんとも贅沢な時間がそこにある。
 はた画伯がひとつひとつ見つけていく田舎の楽しさに、読者はうらやましさがこみあげてくるのだが、同時にその生活のリアルな描写が、田舎あこがれ症候群に水をさす。
 なにしろ冬の寒さは半端ではない。雪を掻かなければ窓ガラスは割れるし屋根のひさしも落ちる。長く伸びたつらら割りを、今どきの子供らはご存知か。
 ウッシーとはた画伯は、淡々とそんな生活を楽しむ。
 「過疎の方がいいじゃないか」
 はた画伯のメッセージは、こんなひとことだろうか。
 
 「北海道に住む!」とは、確かにこういうことなのだけれど、「住むなら都会」と思っている私は、はた画伯とウッシーの物語に胸をあたたかくしながら、ビルの谷間の喧噪を横目にこの原稿を書いている。そしてちゃんとお金を払ってこの本を買って、楽しませてくれたお返しとしてはた画伯に印税がわたり、下川町に税金が入る。
 うん、いいサイクルになっている。

(はた万次郎さんのエッセイが北海道人に掲載されています。)
→ http://www.hokkaido-jin.jp/issue/200202/essay.html

100 佐藤正午 著
『象を洗う』
099 永倉新八 著
『新撰組顛末記』
098 村上 龍 著
『希望の国のエクソダス』
097 石川啄木 著
『啄木歌集』
096 小林英樹 著
『色彩浴』
095 三國清三 著
『料理の哲学』
094 斉藤征義 著
『宇宙船売却』
093 きらん出版会 編・刊
『きらん 魅惑の室蘭・胆振ガイド』
092 井内佳津恵 著
『田上義也と札幌モダニズム』
091 村上春樹 著
『羊をめぐる冒険』上・下
090 『faura』
089 新穂栄蔵 著
『ストーブ博物館』
088 司馬遼太郎 著
『街道をゆく38 オホーツク街道』
087 『北海道かるた 方言編』
086 池澤夏樹 著
『静かな大地』
085 小檜山博 著
『出刃』
084 大崎善生 著
『聖の青春』
083 『女性史研究ほっかいどう』
082 松原 仁 著
『鉄腕アトムは実現できるか?』
081 沢木耕太郎 著
『沢木耕太郎ノンフィクション4 オン・ザ・ボーダー』

061-080
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021-040
001-020
『ウッシ−との日々』1〜7
はた万次郎 著
集英社 刊
1994年10月 発行
ISBN:4-08-782531-0
本体各 980円