

『ベア・アタックス
クマはなぜ人を襲うか』(1,2)
S.ヘレロ著
嶋田 みどり訳
大山 卓悠訳
北海道大学
図書刊行会・刊
2000年9月発行
本体 各2,400円
ISBN:4-8329-7301-0 |
|
|
 |
クマのでるような北海道――。
かつては北海道を形容するたびに、よくこの言葉が使われた。
まだ飛行機もろくに飛んでいない時代に、うんざりした反骨の北海道人は、「北海道では犬の代わりにクマ飼って、番クマにしているんだわ」と、銀座のホステスさんたちを煙に巻いていたという。
たしかに北海道ではクマがよく人を襲うことがあった。開拓期には、道北の苫前町で開拓農家が襲われる事件があり、吉村昭の小説『羆嵐』のモデルとなっている。
北海道にとってクマは、ひとつの畏怖や恐怖を含んだシンボルなのだろう。
本書は、北海道に関してではなく、アメリカを舞台としたグリズリー(ブラウンベア)について、書かれたものである。著者はアメリカの動物行動学者で、1999年には来日し、北海道を訪れ関係者と交流している。グリズリーは実は和名がヒグマ。つまり、北海道のクマであるヒグマと全く同種であるから、本書は北海道のクマと自然環境を理解するうえで、貴重な一冊といえる。
著者は、アメリカの自然公園で二人の女性キャンパーがグリズリーに殺された事件をきっかけに、なぜ熊が人を襲うのかを科学的手法で解明できないか考え始める。そして長年のフィールドワークのなかで、生ゴミや人間の食べ物を食べるようになったクマが、人間を襲う相関関係が強いことに気づく。人を恐れなくなったクマと、クマの領域に足を踏み入れる人間との遭遇が、恐ろしく不幸な結末に至る。
本書は、そのたくさんのケースを克明に描いているとともに、遭遇を避けるためにどうすればいいかなど、クマの生息地でのわたしたち人間のふるまい方を教えてくれる。
いま北海道のクマは、むしろ開発が進むなかで絶滅が危惧される希少種になってしまった。駆除する対象から共生を考える時代になっている。にもかかわらず、現実に人里に降りてくるクマがいるなかで、最近のお手軽なキャンパーたちや登山者たちのゴミに関するマナーは、人を襲うクマを作り出しているといえないだろうか。観光客がクマと出会い、エサを与えたというとんでもない事件もあった。
本書は、その警告の書であり、同時に豊かな大自然と野生動物のリアリティと向き合える傑作である。昔、「シートン動物記」に胸躍らせた方なら、ぜひおすすめしたい。 |
|
 |
|
| 100 |
佐藤正午 著
『象を洗う』 |
| 099 |
永倉新八 著
『新撰組顛末記』 |
| 098 |
村上 龍 著
『希望の国のエクソダス』 |
| 097 |
石川啄木 著
『啄木歌集』 |
| 096 |
小林英樹 著
『色彩浴』 |
| 095 |
三國清三 著
『料理の哲学』 |
| 094 |
斉藤征義 著
『宇宙船売却』 |
| 093 |
きらん出版会 編・刊
『きらん 魅惑の室蘭・胆振ガイド』 |
| 092 |
井内佳津恵 著
『田上義也と札幌モダニズム』 |
| 091 |
村上春樹 著
『羊をめぐる冒険』上・下 |
| 090 |
『faura』 |
| 089 |
新穂栄蔵 著
『ストーブ博物館』 |
| 088 |
司馬遼太郎 著
『街道をゆく38 オホーツク街道』 |
| 087 |
『北海道かるた 方言編』 |
| 086 |
池澤夏樹 著
『静かな大地』 |
| 085 |
小檜山博 著
『出刃』 |
| 084 |
大崎善生 著
『聖の青春』 |
| 083 |
『女性史研究ほっかいどう』 |
| 082 |
松原 仁 著
『鉄腕アトムは実現できるか?』 |
| 081 |
沢木耕太郎 著
『沢木耕太郎ノンフィクション4 オン・ザ・ボーダー』 |
|