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<7>ドウス昌代著『イサムノグチ』
『イサムノグチ』/ドウス昌代著/講談社

『イサムノグチ』
ドウス昌代著
講談社
2000年4月発行
本体2,000円
ISBN:4-06-203235-X
 
◎北海道にフロンティアの風景を見た世界的芸術家の生涯
 北海道が生んだ世界的彫刻家に、美唄出身の安田侃がいる。その安田の彫刻の写真集に、安田と親交が深かったイサムノグチが文を寄せている。通り一遍ではない、包むような温かさと突き放すような厳しさが入り交じったイサムノグチの文章は、この人の独特の世界の存在を示していた。
 イサムノグチ自身もまた北海道に足跡を残している。札幌の大通公園の彫刻すべり台<ブラックスライドマントラ>は、今も子供たちに人気があり、彼が設計したモエレ沼公園ではピラミッドが不思議な空間をかたちづくっている。イサムノグチは、この公園の完成を見ないまま、1988年に84歳で世を去った。
 本書は、そのイサムノグチの激動の一生を、北海道出身のノンフィクション作家・ドウス昌代が描いたものである。
 イサムノグチは、1904年(明治37年)アメリカ留学中の父・野口米次郎と母レオニー・ギルモアの間にロサンゼルスで生まれた。幼少期を日本で過ごすが、残りの人生の大半を「日米混血の芸術家」としてアメリカで送った。
 藤田嗣二、野口英世、フリーダカーロ、マーサグラハム、山口淑子など、彼の人生をいろどる交遊は歴史そのものであり、人種差別と排日運動、社会主義運動、日系人強制収容所への収容、そして世界的芸術家としての成功など、イサムノグチの存在それ自体が歴史なのだといえる。
 アメリカという白人社会のなかでアジア人のアーティストであるということ、そして日本において「アイノコ」(イサム自身の言葉)であるということは、それほど簡単なことではない。常に<境界>に身を置き、正統への反骨によって生を燃え上がらせるイサムノグチの芸術の本質は、そのことと無縁ではないだろう。
 晩年、イサムノグチが札幌で最後の仕事をすることになった経緯が本書にはある。彼が札幌を訪れたとき、北海道の風景にアメリカを感じ、日本のフロンティアだと思った。札幌市が用意した場所のうち、付け足しのようにあったゴミ処分場・モエレ沼に立ったとき、彼はそこに心を奪われ、「全体をひとつの彫刻とみなした、宇宙の庭になるような公園」の可能性を熱く語っている。
 モエレ沼公園の風景のなかで、わたしたちは、その情熱のかたちとふれることができる。
 
http://www.noguchi.org/
イサムノグチ財団(英語)
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