HOME > 連載【となりの北海道人】『私のお父さん』第34回

連載【となりの北海道人】『私のお父さん』

第34回

*話すこともあまりなく、聞くことも少ないお父さんの話。でも、お父さんにまつわる話はおもしろいんです。

■171『たら釣り漁の苦労話を唄に』

大島豊彦さん(77)=漁業、後志管内古平町出身、後志管内古平町在住

 ―漁師だったお父さん大島豊吉さんは、北海道民謡『たらつり節』の作者。
 おらいのじいさんはとにかく唄が好きな人で、晩飯を食べたあとはいつも唄ってたな。古平には民謡がないのかと言われ、じゃぁたらつり節でも作ろうかとなって。田村さんと二人で作ったんだけど、作者不詳のまま唄だけがいつの間にか広がっていたんだな。40年位前かな、津軽に行ったときラジオから『たらつり節』が流れてきたのにはびっくりしたな。
 ―お父さんはたら釣りの漁師だったんですか。
 そう思われているけど、じいさんは海藻とかウニを採る磯まわりの漁師で、たら釣りじゃない。友達からたら釣りの苦労話を聞いて作ったんだ。
 ―古平では毎年「たらつり節全国大会」が行われますね。
 じいさんが生きていたころ、大会から戻る車の中で「なんで今の人は節を変えて唄うんだろう」と言ってたな。じいさんの節まわしは独特で難しいから。今は節まわしがなめらかになっている、だから大勢の人が唄ってくれるのかもしれないな。
 じいさんの節は、オイーヤーァサーァアエエー♪

(杉本真沙彌)

■172『反面教師のはずが同じ道』

大道 慎さん(26)=会社員、美唄市出身、美唄市在住

 ―一緒に遊んだ記憶があまりないとか。
 父が役所勤めだったこともあって、夜のつきあいが多かったんです。僕が起きている時間帯には帰ってこなくて、朝食のときに会うくらいでした。親子ケンカなんてありえない。育児は完全に母任せでした。
 ―成人してから晩酌をつきあったりは?
 酔っている父が苦手なので、一度もありません。本人も今年60になるのでペースが落ちて。帰る時間は早くなりましたが、焼酎をホッピーで割って1人でやっています。ホッピーは一日2本まで、らしいです。周囲からは「一緒に飲めるうちに飲んでおけ」と言われますが、基本的に飲んでいないほうの父と話したい(笑)。
 ―ご自分も地域に根ざした公の仕事についたのは、お父さんの影響かも。
 やることはやって、家族に不自由な暮らしをさせない。自分が働きだしてからは「それってすごいことなんだな」と感じるようになりました。定年まで何事もなく穏やかに過ごしてほしいです。

(佐藤優子)

■173『孝行は生きているときも大事だけれど』

湯澤精司さん(62)=和食処店主、歌志内市出身、石狩市在住

 ―「おばんざい処いちじょう」は、魚が中心のメニューですね。
 もともと釣りが好きだったということもありますが、魚はヘルシーですから。味付けも薄味にこころがけています。
 ―お父さんも釣りを?
 小さいとき、夜中の2時ころ起こされて、自転車のうしろに乗っかって砂川まで釣りに出た記憶がありますね。砂利道を1時間半くらいかけて行きましたが、うれしかったですね。
 ―お父さんのご職業は?
 歌志内の炭鉱で働いていました。明治の人ですから、がんこでしたね。よく勉強しろと言っていました。夕飯を食べてからが勉強の時間なんですけれど、終わるまでそばで見ていました。見張り番ですね。
 ―一番思い出されることは?
 将来は炭鉱がなくなるから、そのために勉強しておけ、とよく言っていたことですね。おやじは63で亡くなって、私は今年で63ですから。親より長生きすることが人生の目標でした。親が生きてるときも孝行は大事だけど、長生きすることが親孝行だと思っています。

(杉本真沙彌)

■174『父の写真で再認識しました』

大橋英児さん(52)=写真家(http://www9.plala.or.jp/mdsaw/)、稚内市出身、稚内市在住

 ―自動販売機を写真に撮っていらっしゃるそうですね。
 自動販売機は現代の大量生産大量消費する社会を象徴しているんです。これから日本中の自動販売機を撮っていくつもりです。もしかしたら、日本中の自動販売機を撮ってみても同じかもしれない。それはそれで、グローバル化している、ということになるのだと思う。
 ―お父さんは何をしておられたのですか?
 郵便局に勤めてました。人のいいおじさんでしたね。寡黙で目立たないけれど、近所の開拓碑の雑草を黙って刈っておいたりするような人でしたよ。
 ―お父さんも写真を撮っておられたのですか?
 亡くなってからカメラと写真が見つかったんです。昔の蛇腹のついたカメラと、写真が出てきました。実家の周辺を撮っていたんですね。その写真を見て、写真は記録として大切な、価値のあるものだということを再認識しました。今同じ写真を撮ろうとしても撮れやしない。写真はその瞬間、そこにあったものが残るんです。

(皐月)

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