HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.12

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その12

キャー。コンブをまいて踊っていらっしゃる天女様が、壁に張りつておるんですね。
アンタ、ちょっとおいでー、おいでー。てなポーズの腰つきで、こっちを見詰めているような、そうでもないような目つきって解ります? あれ、ややこしいのよね。その目はボク、ボクのこと好き。ぐるーんぐるぐるーんしてきて、なおさら妖しさが輝いちゃうから、ダダダドドドてなぐあいに熱くなって、バクダンのスイッチが入るよね。
てな思いでボーっと天女様を見詰めていたら、へんな四角い顔の男が、いらっちゃーいって猫掻き手で呼ぶんだよ。それで、太巻きみたいなコンブを食わせようとするんだ。ものスゴイ早口で、やわらかくてコクがあってケッコンできますヨーてなこと言うのよ。落ち着いてよーく聞いていると、ケンコウ的ですヨーって言ってたな。
店の奥にはコンブだとか海産物だとかがあるようで、その玄関先のポスターにされている天女様。やっとみつけたけどさ、やっぱり人肌のぬくもりのあるホンモノがいいな。

イラスト「こんぶ」

そー言えばさ、正月の三日に神社の参拝に行ったときの話。賽銭おとして手を合わせていたら、左にあるデカイ柱にぶちあったてヨロケルように抱きついてきた方がいてね、なんか感触がやわらかいスカスカのヘチマを抱いているようでね。ハッとしてよくみると、かなりの老おバアーさまだったのよ。
80はいっているかな。90かな。その方がさ、無言でボクから離れていったけどさ、まだヨロヨロしているんだよな。なんか気になってね。
冷え込み厳しくてさ、路面ツルツルだったからね、参拝終わるの待っていたんだわ。
やっぱりヨロケテいるからスーっと手をだしたらさ、その方もスーっと静かに手をだしてきてさ、強くにぎり合っちゃったのさ。無言のままだよ。やばくねー。ラブラブの危険な空気ただようようなムードだよね、これって。
そしてね、ツルツルの階段をゆっくり下ろしてね、安全を確認してから手を離したんだけどさ、その方やっぱり無言のまま振り帰ることもなく行ってしまったのよ。高級な輝きを放つミンクのコートを着ててね、どうみてもブルジョアな老おバアーさま。
でもさ、フツーなんか言うよね、なんか。だからさ、今でもその日のこと気になるんだよ。 たぶんその方は、神様だったと思うことにしてるんだわ。
てなこと、ありました。とにかく無言なのよ。

(つづく)

イラスト「へちま」

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
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