HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.11

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人 」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その11

オルゲン。ぷェー! オルゴールのことそんなふうに昔は言ってたんだ。
なんかカッコええよね。ゆっくり廻るポチポチした針の山のアンティークな機械がさ、素朴なメロディーを作りだしてしまう姿ってさ、なんとなく山奥の源流をみているようで、ひたひたカラダにしみわたると言うのか、感じちゃうよね。
人間は感じないとだめになっちゃうからねピッピかピのぺーなんてね。
てなこと勝手に思いながらオルゴール堂を出て西に歩く。

イラスト「オルゲタ」

さらに歩く。あ、なんですか?コレは的な文字看板を発見! 「七日食べたら鏡をごらん」なんじゃなんじゃコレ。まーとにかく無視して、ひたすら西に歩く。
小樽出世前広場のまえで足をとめる。ここは知らないな、新しいスポットじゃないの、奥に袋小路があってなんかいろいろお店があるようだけど、人がゴチャゴチャいるのでまた西に向かう。
岩永時計店。おー明治な屋敷じゃーないの屋根にシャチホコがあるのか、大阪城にもあるような、コワイ顔した魚が向きあってあれなんだろね。屋根からくるドロボー避けみたいなもんかね。いやまてよ、新しい型のねずみ取り器だなこれは。両方の魚がグーググーってなふうにせり寄ってきて、ねずみがおどろいているうちに右魚が拡声器で「ただちに銃をすてなさい。早く手をあげて舌をだしなさい!」てなこと言うんだな。そして挟み撃ちにして焼いて食っちゃうか。なんて言うもんだから、左魚がレモン醤油があると香りがステキよねーてなこと言うのだ。それですかさず、ねずみがゆず醤油もってきてショーゆうーコト。なんて言うのさ……ね。
とりあえず時計店のドアをあけて入ってみる。
カウンターで奥さまたちが密談している。かかわらないように奥の隅のテーブルに座る。

イラスト「ネズミ」

ショーケースのなかに古い時計がぎっしりと並んでぎらぎら輝いている。なつかしいね、ウチのじいちゃんが大事そうに腰からぶらさげていた懐中時計もあるよ、いいね。
親指でネジの頭を押すとマンホールのふたみたいのが、パッカと開いて秒針がコッチコッチとゆったり廻る音がして、オルゲン的な風格があるんですよ。うん、実に古くて新しいってなやさしさを感じるな。
coffeeをすすっていて気がついたことがあった。
あの文字看板……さっきもみかけた思いがある。気になってきたからただちに店を出て東に戻った。
すると「ワタシも食べてますー」てなささやきが壁から聞こえてくるのよ。エーーってなことで壁に目をむけるとだ、すぐそこに手のとどくところにいるんです。あの天女様がサ。
……ボクはおどろくのです。あの山のお寺で踊っていらっしゃった貴女がなぜ、こんなところで昆布に喰らいついておるのでしょうか?

イラスト「天女さま」

(つづく)

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
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