HOME > 鯨森惣七の「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」vol.8

鯨森惣七の「陽だまりがあれば地球人 」より「コレは、まちのゲー術だ。と叫びつつ、ちょっとずつ歩きまわる旅。」

cuziramori

小樽の地図

小樽編その8

昼のヨットハーバー。海風にあおられてポールの赤い旗がビローンと音をたててなびく。陽射しは悪くない、ほんわか小春日和、とっても気持ちエエのよ。
ついその気になっちゃったようで、石原裕次郎記念館の近くに来てしまった。ひとっけはほとんどないのだが、しゃがみ込んで芝生を整えている老人が、先ほどからチラチラ目線を向けてくる。アンタ裕次郎、観ていきな。てな誘い目なのだ。

イラスト「カモメがとんでラッチョー」

ここに来ちゃうと、少年時代をいろいろ思い出してしまうからさ。貧乏長屋(屋根つづきの借家)で活きていた少年のボクは、楽しみのひとつに映画があってネ、毎日のように劇場のトイレの小窓から、こっそり侵入してさ、銀幕(スクリーン)の暗闇にまぎれこんでいた。まー映画ドロボーなんだネ、切符売り場のお姉さんは見逃してくれていたんだネ。
そしてさ、時代が裕次郎をスターにしていった。それまでは長谷川一夫や鶴田浩二などの美しい男で、演技もバツグンと言うのがスターだったけど。裕次郎はひたすら不良でガサツで番長っぽい強さが、少年のボクらに魅力的に写った。昭和32年、何かあたらしい価値観が生まれはじめた頃だったからだネ。

イラスト「ヨット」

でね、映画の『嵐を呼ぶ男』なんかの、ドラムをバカスカぶん殴るようなシーンがあって、ゴリラが暴れるようなアクションするもんだから、観ているボクらは拍手なんか自然にやってしまっているんだよ。
ボクらは完全にハマってしまっているからさ、銭湯の湯船に足かけて、タオルをマフラーのように首に巻いて、壁の富士山を観ながら気どってさ、口笛なんか吹き鳴らしていたよ。……オタルには、そんな昔を思いださせる風が流れているんだネ。いい街だネ。

イラスト「銭湯の湯船に足かけて…」

(つづく)

《プロフィール》

鯨森惣七(くじらもり・そうしち)

室蘭生まれ。東京八丈島でダイバーとして漁師と共に働く。のちにCM制作の職に就く。札幌でTOMATOMOONとサクラムーンを設立、プロデュースする。近作として、JR車内誌での「陽だまりがあれば地球人」、サッポロビールでの「ボクだって星の王子様」などのイラストエッセイ。現在、HTBテレビ「ハナタレナックス」の収録スタジオのデザインおよびオープニング映像・タイトルの企画制作を手掛けている。
メールアドレス

このページの先頭へ