道北・遠別発
四季の便り〜人・まち・風景

「獲物」と呼ばれた生き物

2012.03.15


「俺が若かったときは、この辺ではエゾシカなんて珍しかったんだけどなぁ」
と話す視線の先には、ゆっくりと歩みを進める10数頭の群れ。
乾いた銃声と共に1頭のメスジカが崩れ落ちると、一転、群れの動きが騒がしくなります。

今月10日から、留萌管内でも「エゾシカ一斉駆除実施期間」がスタートしました。
道内で推定65万頭(※1)が生息しているといわれるエゾシカの現状は、最近、交通事故や農業被害、食用利用などでニュースに取り上げられる機会も増え、ご覧になった方も多いかと思います。

乱獲などによって一時、絶滅寸前とまで言われたエゾシカが、
同じ人間の保護政策で護られ、繁殖し、
いまや、自然の生態系を破壊するおそれについて指摘されるまで増えてしまっている。

なんとも皮肉な話ですが、色々な要素が連鎖・連結している自然の様相は、巨大なピタゴラ装置(※2)のようにも感じます。

銃声が止み、あたりが静かになってからが私の役割です。
倒れたエゾシカの身体の一部に縄をかけ、スノーモビルで運べるところまで引きずり出します。
縄を引く手に、ずしりと重みがかかります。


「こりゃあ全部枯れるな・・・」
この冬の深雪はエゾシカたちにとっても厳しかったのでしょう。
樹皮が食べられ、丸裸になったヤナギ林を見てつぶやいたハンターさんの一言は、十年、二十年先に、ここの風景がどうなっているかを考えさせられます。

エゾシカのアイヌ語での呼称は「ユク」、「獲物」を意味する言葉だそうです。
実際に、解体作業をしていると一頭から出る”もの”の量に驚かされます。肉や皮、骨、角など、エゾシカは「森の恵み」の象徴だったことでしょう。

現在、生きたエゾシカを狩り、獲物にしている野生動物は道内にほとんどいません。
私個人は、自然について学ぶ機会や先生に恵まれたこともあって、彼の生き物たちとどうお付き合いしたら良いものか悩むときもあります。
まだ、自分なりの答えはみつかっていません。

ただ、狩りに連れて行ってもらうようになってから、この年になってようやく、本当の意味で「いただきます」が言える様になった気がします。


※1 2010年時点の推定数。
※2 詳しくはNHK教育番組「ピタゴラスイッチ」をご参照ください。
http://www.nhk.or.jp/kids/program/pitagora.html

【エゾシカについて紹介しているHP】
北海道庁エゾシカ対策室
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/est/index.htm
社団法人エゾシカ協会
http://www.yezodeer.com/

佐々木伸宏

佐々木伸宏

遠別町地域おこし協力隊
1974年札幌市生まれ。2011年4月から遠別町に移住、「地域おこし協力隊」の一員として、高齢者の生活支援などの地域協力活動に取り組んでいます。


遠別町地域おこし協力隊HP
http://www.town.embetsu.hokkaido.jp/kyouryokutaiHP/

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