第25回 知床ちょっといい話

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知床半島塾

第25回 知床ちょっといい話

知床半島塾 2012.01.19

 みなさんは、『地のはてから』という小説を知っていますか? 2011年の第6回中央公論文芸賞を受賞した、乃南アサさんの作品です。
 知床はアイヌ語で「地の果て」という意味ですけれど、小説の舞台はその知床のイワオベツです。主人公はそこに入植した家族の娘で、極寒の土地での過酷な生活、アイヌ人青年との恋、辛い奉公、結婚などを通じて、その時代を生きぬいた女性の生き様が描かれています。
 実は昨年の11月、夫と私の二人で中央公論文芸賞の授賞式に招待され、行ってきました。
 アサさんとの出会いは10年ほど前になるでしょうか。知り合いの知り合いのそのまた知り合いからの紹介で、6月の知床を案内したことがきっかけです。「北海道はいいな」というアサさんに「北海道は冬にも来て、春にも来なくちゃわからないよ」と言うと、さっそくその年の冬にやってきて、畑の中でスノーモービルをしたり、砕氷船オーロラ号に乗ったりしてずいぶん楽しんでいたようでした。それから年に1、2度来るようになって、今に至ります。
 小説執筆のために何度もこちらに来て、開拓時代にバッタが大量発生したときのことだとか、アイヌの文化について、資料を探したり、詳しい人がいると知っては会いに行ったり、徹底的に取材をしていた姿には、本当に驚きました。
 授賞式で浅田次郎さんが、この小説について「王道をいく小説」と言っていたのは、緻密で根気のいる取材があったからだなあと、聞いていて思いました。
 たまたまアサさんと一緒にいたときに、『北海道人』編集部から原稿の催促が来ました。アサさんの素晴らしい小説を、一人でも多くの方に読んでいただきたいと思って、今回ここ紹介させてもらいました。
 みなさん、『地のはてから』をぜひ読んでくださいね!

河面孝子 (こうも・たかこ)

知床半島塾運営委員長、有限会社苺の丘こうも代表取締役。昭和23年生まれ、佐呂間町出身。

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