最終回 つながり

最終回 つながり

卒論のために、私の職場である黒島研究所を現在利用中の真っ黒に日焼けした北海道人学生

 7月5日、那覇でプロ野球の公式戦を観戦してきた。沖縄はプロ野球キャンプのメッカでありながら、公式戦は毎年のことではない。公式戦のカードはカープ対ベイスターズだった。沖縄の広島県人会からは、早くから案内が届いていたものの、仕事の都合がつかず断念していた。カープファンの私にはつらい決断だった。
 ところが、その後に仕事の段取りがつき、「チケットを抑えておけば」と後悔していたところ、7月1日付で転勤となったという関係機関の人があいさつにきて、「転勤がなければプロ野球を見に行くつもりだった。那覇に出張の予定とかないですか?」とチケットを出してきた。「カープが私を呼んでいる」そう感じた私はありがたくチケットを受け取った。
 試合当日、那覇の球場へ行くと沢山の知り合いや親せきに会った。ある知人は「わざわざ那覇に出てきたんだ。選手に知り合いがいるの?」と声をかけてきた。私が一方的に知っている選手は何人もいるが……。
 実はこの「選手に知り合いが……」は沖縄の特性である。沖縄はつながりを大切にする。そのため、知り合いもいないのに、遠くからわざわざ観戦にかけつける私の感覚は不思議であると捉えられるのである。学生時代、実行委員会をつくって東京の劇団に公演してもらった時は、チケット販売に苦戦した。友人知人がチケットを買ってくれないのである。理由は「お前が出演しないのに何で買わないといけないのか」である。一流の役者の芝居より、舞台に知人が立つほうが心は動くのである。
 車など高い買い物となると、販売店に行くのではなく、車関係の知人か車関係の知人がいそうな知人を探すという行動をとる。逆に言えば高いものを売る営業マンで成績の良い人は交友関係が広いか、親せきが多いと沖縄では言えよう。
 さて、私の連載もこれで終わりとなった。今年も北海道出身者や北海道の大学に通う学生が研修に来る。きょうも北海道から来たという観光客に話かけられた。私がよく行く石垣島の居酒屋は店名の一部に「おたる」と入っており、周辺のサンゴ礁の海には生息しない北の魚介を食べさせてくれる。北海道とのつながりはこれからもつづくであろう。地理的には遠くても、私と北海道の心の距離は近い。この連載もそう感じさせてくれる大きな要因の一つだった。みなさん、ありがとうございました。
 先日、私に公式戦のチケットをくれて去った方の後任が着任のあいさつにやって来た。北海道からの転勤であった。

プロフィール

若月 元樹(わかつき もとき)
1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。
・黒島研究所

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