タコライス

古くからタコライスを出している店舗のひとつで撮ったタコライス

 タコライスというメニューをご存じだろうか。簡単に説明すれば、タコスの具がライスに載った料理である。沖縄では具がレトルトで販売されていたり、学校給食でも出されるほど市民権を得ているメニューで、私の暮らす小さな島・黒島の飲食店でも出しているところがある。那覇空港の飲食店や弁当売り場でも取り扱われており、全国的にも知れ渡ってきていると思う。
 私が大学生だった時代、タコライスは沖縄でもまだあまり知られていないメニューであった。しかし、学生たちにはよく知られた大人気のメニューだった。
 私が学生のころのタコライスはごはんにタコスの肉が載っているだけだった。トッピングとして追加でチーズや野菜(レタス)を加えていた。これをタコライスチーズヤサイと呼ぶ。現在広く知れ渡っているタコライスはチーズや野菜もふくめてのものだが、老舗でタコライスとは、具がタコスの肉だけで、今でもチーズや野菜を追加する制度になっている。
 タコライスは沖縄本島の中北部から広がった。沖縄は明治時代の終わりごろから、多くの移民を送り出した歴史がある。今では5年に一度、世界中から沖縄県系人が集う「世界のウチナーンチュ大会」が催されるほどの移民県である。ちなみに今年はその開催年にあたり、10月に予定されている。沖縄から世界中にちらばった移民のうち、南米に暮らす人々の一部が沖縄にUターンし、米軍基地の多い中北部で米兵相手にタコス屋をはじめた。だから沖縄にはタコス屋さんが多いのである。
 沖縄本島北部の金武(きん)町にある米軍施設のキャンプハンセンのゲート近くには何軒かタコスやタコライスを出すお店がある。このうちの一軒がタコライスを生み出した店である。ごはんにスパイスの効いたひき肉、そして大量のチーズ。味もさることながらそのボリュームがタコライス本来の魅力であると私は思う。大柄な米兵の胃袋を満たしつづける本物のタコライスを味わうなら、中北部にあり20年以上前からタコライスを扱っている店をお勧めする。ついでにハンバーガーも恐ろしく大きく、マクドナルドのメガマックは足元にも及ばない。
 全国区になりつつあるタコライスが、全世界に広がりつつあるという話を聞いた。沖縄の米兵に人気のタコライスが世界中の米軍施設に飛び火し、すでに他国の米軍施設のメニューに存在していると基地関係者から聞かされ驚いたことがある。
 米兵の心をつかめば、世界的なヒット商品を世に出せる環境に沖縄はあるようだ。

プロフィール

若月 元樹(わかつき もとき)
1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。
・黒島研究所

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