ミルク酒

泡盛の酒瓶につめられたミルク酒

 沖縄本島と八重山諸島の中間に位置する宮古島と橋でつながっている池間島(いけまじま)という島がある。この池間島へ行事を見に行った時、「ミルク酒」と呼ばれる泡盛との出会いがあった。
 宮古島の泡盛のメーカーのラベルのついた酒瓶に詰められた「ミルク酒」、名前もさることながら、そこに並べられた数の多さにも驚いた。
 沖縄で行事の時に出され、「ミルク」という名称が付くとなると、私の場合このコーナーの挿絵にもなっている「ミルク(弥勒)」の神様を連想してしまう。沖縄では神行事の時に「ミキ」と呼ばれる白い飲み物を使う。まずくはないが、あまり美味しいわけでもなくて、ガブガブ飲めるようなものではない。池間島ではその「ミキ」が「ミルク酒」と呼ばれ、瓶詰にされているのかと思っていたが、「これ、ミキですか」と伺ったところ、「ミキはおいしくない」と、ミキとは違うという回答を得た。
 「ミルク酒」には何が入っているのかと聞くと「ワシミルク」と返答があった。沖縄ではイーグルマークのコンデンスミルクの缶詰がよく流通していたのか、コンデンスミルクのことを「ワシミルク」と呼ぶのが一般的だ。練乳などと言うと理解できない人もいるかもしれないほど、「ワシミルク」の名称は市民権を得ている。
 私はかき氷を注文する時、必ず練乳をかけてもらう。大体50円とか100円プラスで練乳をかけてもらえるのであるが、「倍払うから普段の倍かけて」とお願いすることが多々ある。そんな甘党かつ酒飲みの私でも、このコンデンスミルクと泡盛の組み合わさった「ミルク酒」の最初のひと口はちょっと勇気が必要だった。

行事で踊る場所に準備されたかめに入れられたミルク酒。ひしゃくがワシミルクの缶でつくってあった。

 しかしひと口飲んですぐ、美味しいと感じた。この味は飲むピッチを早めそうで危険な甘さである。
 沖縄本島の北部、山原と書いて「やんばる」と呼ばれる地域のひとつに大宜味村(おおぎみそん)という村がある。大宜味村でお酒を飲む機会があった時、お年寄りらがコーラを手に現れた。かつて大宜味出身のコーラばかり飲んでいる上司がいたこともあり、大宜味村の人はコーラが好きなのかと思っていたら、皆泡盛で割って飲んでいた。私も飲んでみて「いける」と感じた出来事だった。
 もしかしたら沖縄の各地では、泡盛をいろいろなもので割っているのかもしれない。ちなみに泡盛のコーラ割は昨夏の研修生たちには大ウケだった。おかげで深夜になると、ベッドまで辿りつけない研修生が続出していた。
 今年の研修生たちには「ミルク酒」を教えてみて、どうなるか観察してみようかな。

プロフィール

若月 元樹(わかつき もとき)
1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。
・黒島研究所

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