価値ある急ブレーキ

価値ある急ブレーキ

石垣空港に着陸した飛行機。これより大きい飛行機が石垣空港を利用することはない。写真のような曇りの天候だと着陸できずに那覇などへ引き返すこともよくある。

 全国で地方空港の過剰な建設が問題になっているようであるが、石垣島では新たな空港が完成間近である。沖縄に関して言えば多くの有人島からなる県であるがゆえ、いくつも空港があるのは当然である。
 現在の石垣空港は滑走路が1500メートルと短く、写真のタイプの旅客機が利用してよい滑走路の長さではギリギリと聞いている。そのギリギリ具合は飛行機に乗っていても実感できる。着陸時の急ブレーキがとにかく凄いのである。足元に置かれた荷物が前方へ滑ってゆく光景は石垣空港ならでは。石垣空港への着陸時でも寝ていて目覚めない人は相当眠りが深いといえよう。
 滑走路が短いと離陸も大変なようだ。載せられる燃料が制限され、石垣島と本土を結ぶ便は本土からは燃料をたっぷり入れて直行できるが、石垣空港を発つ便は途中で宮古島の空港に一度着陸し、燃料を足して本土へ向かう。直行と言い切りがたい事態が毎日繰り返されている。
 燃料が制限されるわけだから貨物も当然制限される。夏場は八重山特産のパインやマンゴーの積み残しが発生し、生産農家を悩ませているようだ。また、冬場の雪や凍結などの心配は皆無であるが、夏場の気温の高い日にはエンジンの燃焼効率が下がり、乗客までもが降ろされて重量を軽くする措置が取られてしまうそうだ。
 その他にも市街地にあるとか、滑走路に勾配があるとかいろいろと理由があり、今より長い滑走路の必要性については意見が一致していたものの、新空港の建設地をめぐってはかなり長い間もめていた。現在は滑走路もほぼ出来上がり、2013年の供用開始を目指して作業は大詰めを迎えている。と言いたいところだが、建設地内で約2万年前の人骨が2007年に発見されてしまった。科学的な測定法で確定した人骨では日本最古となるらしい。
 当初、沖縄県の担当者はこの事実を隠ぺいしていた。実は私は発見者と知り合いだったため、かなり早くから「新石垣空港建設地ですごいものを発見した」と聞かされていた。具体的に日本最古の人骨とまでは教えられなかったが、「県が隠ぺいしている」と聞かされていたので、いつバレるか楽しみにしていたら、昨年ついにバレてしまった。こんなに価値のある発見だから新空港の供用開始に急ブレーキとなるのではと心配したが、今のところ供用開始が遅れるなどという報道は見られない。
 現在、沖縄の観光入域客は順調に伸びてきているようであるが、八重山地域は苦戦しており観光関係者は苦悩している。
 新空港が開港すれば、現在の着陸時の急ブレーキをもう体感することができなくなるということを売りにして、集客をしてはいかがだろうか。それぐらい価値のある急ブレーキであると、私は石垣空港へ降り立つ度に感じている。

プロフィール

若月 元樹(わかつき もとき)
1974年広島県生まれ。沖縄国際大学大学院地域文化研究科修了。高校まで広島で過ごした後、沖縄の祖母の家へ移り住む。大学卒業後、そのまま沖縄でサラリーマンになったが、遊び足りなくて退職。大学院へ行ったはいいが、みんなまじめに研究していて衝撃を受ける。現在は八重山諸島の黒島にあるNPO法人日本ウミガメ協議会の附属研究所・黒島研究所でウミガメや島の人々らと戯れている。
・黒島研究所

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