頭爆発、超バタバタ

頭爆発、超バタバタ

 先ほどから頭の中が爆発しそうなほどバタバタしている。私は仕事でしょっちゅうバタバタしている。メールマガジンの連載「大陸人の時間」を読んでくださっていた方はご存じかもしれないが、私は中国の北京でスチールカメラマンの仕事をしている。主にニュースの仕事が多いが、機内誌で中国国内の“旅”をテーマに写真を撮影したり、大判カメラでインテリアや建築写真を撮影したりと、かなり幅広く写真の仕事に携わっている。各分野に専門化している日本のカメラマン事情と違い、北京には日本人カメラマンがそれほど多くないので、日本人というだけでいろいろな仕事が回ってくるのだ。
 これだけバラエティーに富んだジャンルの写真をこなしていると、時々頭の中が爆発しそうになる。
 今朝、サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の1次リーグ、鹿島対長春の試合を撮影するために北京から黒竜江省の長春に入った。空港でタクシーを拾い、ホテルに向かおうとすると、運転手がぼったくろうとする。
 「メーターは壊れている、90元で乗せてやる」
 中国の地方都市の空港にいるタクシーの運転手は、かなりの確率でたちが悪い。他のタクシーに乗り換えたいが、とにかく時間がない。泣き寝入りするしかない。
 ホテルに到着してサッカーの取材に行く準備をしていると、北京から電話が入る。「青海省で地震が発生したんだけど、これから行けないか?」という内容だが、サッカーの取材をすっぽかすわけにもいかない。前半戦だけ撮影して空港に向かえば、何とか北京経由で甘粛省蘭州行きの飛行機に乗れそうだ。蘭州から青海省西寧までは車で4時間。そこから震源地までは800キロ以上あるが、明日の夜までには被災地に到着しそうだ。とにかくそうすることに決まった。

Photography:Minoru Iwasaki

青海省まで

 久しぶりのサッカーの撮影も、これから標高4000メートル級の山々を越えて未知の旅に出ると考えると、集中できない。運良く前半に鹿島が得点してくれた。とにかくシャッターを押しまくり、荷物を取りにホテルに向かう。
 やっと見つけたタクシーの運転手に事情を話すと、無線を使って「ただ今、日本人記者を乗せました。青海省で地震があったと言っていますが、だれかこの情報を知っている人はいませんでしょうか、どうぞ」とタクシーの運転手仲間に知らせる。無線には、地震は午前中にあっただとか、震度はいくつだったとか、次々と情報が入ってくる。事情を理解した運転手はものすごいスピードでホテルに向かってくれた。
 ホテルで荷物をまとめ、チェックアウトする。従業員が「もう帰るんですか?」と驚く。部屋には30分ほどしかいなかったのだが1日分の料金を取られる。ここでも交渉している時間がない。「ぜひまたいらしてくださいと」従業員に言われる。二度と来るものか。
 空港に向かう車内で、先ほど撮影したサッカーの写真を次々と東京へ送る。パソコンを抱えて空港の荷物検査を受けながら、写真を送りつづける。何とかサッカー取材の仕事を無事終了。北京空港に着き、必要なレンズや通信機器を外で受け取ると、蘭州へ向け再度出発。
 そして、ただ今機内でこの原稿を執筆しているのである。
 本当に頭が爆発しそうとはこのことだ。ガイドブックを見ると蘭州から被災地まで1000キロはありそうだ。いったい何時間かかるのだろう……。一難去ってまた一難……。
 「ホントノシュンカン」を感じる余裕もなく、第1回の連載は終わるのであった。

プロフィール

岩崎 稔(いわさき みのる)
写真家。1974年、宮崎県生まれ。東京工芸短期大学写真学科卒業、中国人民大学法学部卒業。95年から北京市に暮らし、同市を拠点に活動を続けるかたわら、アジアのフォトグラファーネットワークづくりなどに尽力している。2010年度新聞協会賞受賞。
・Minoru Iwasaki Photography

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