転がり変わりゆく還暦エクスタシー♪

転がり変わりゆく還暦エクスタシー♪

vol.12

2011.03

転がり変わりゆく還暦エクスタシー♪

とろんの「右巻きアートエッセイ」 プロフィール

NEW MOON VILLAGE 風景4(バナナとザボンの果樹園の丘に在る、あすか&ひでさん&麻陽くんファミリーの家)

 今、2月18日、快晴の空の下。サンセットと同時に、東のジャングルの隙間から黄金色に輝く巨大な満月が浮上してくるのは、必至。まさか、こんなベンガルの本格的なジャングルの中から満月を拝めるとは、人生の歯車の狂い方にもほどがある!!! と、ボクも太一も愛妻はるかも、この「神様のイタズラ」に、ヒトの摩訶不思議さに、ますます喜び驚嘆している日々なのだ。
 シヴァ神(破壊と創造の神)の街バラナシ(インド)で、1月26日、60歳を迎えたボクは、畏怖心と好奇心が交差高揚していた。なにしろ50歳の誕生日のときは、聖なるガンジス河の石段を転がり落ちて右足首を骨折しているし、30代半ばから何度もバラナシにやってきては、身も心もズタズタに壊されつづけてきたのだから。聖地の只中では、ヒトは徹底的に壊されてはムダなものが削ぎ落とされ、やったことがやり返される「イノチの法則」が活きており、未熟であればあるほど破壊され、「源点回帰」に向かうのだ。120歳まで生きようとしているボクの勝手な意志力からすると、60歳は、まさに「還暦」の名にふさわしい「折り返し地点」だし、まだまだこれからの地点だから、また何かが起き、壊されゆく予感は強烈だ。
 聖地バラナシから何も起こらぬまま無事脱出しようと、カルカッタに向かう夜行列車を待っていたとき、恐怖の第一陣痛がやってきた!!! 列車は夕方5時発だったので、4時に駅に着いたボクらは、のんびり夕食でも食べながら列車の到着を待とうと余裕綽々としていると、いきなり「深夜12時到着」の変更アナウンス!!! 今から8時間もどこでどうやって待つのだ! 太一は7時には寝てしまう!! そして、この全く冷静沈着なるキレイな女声のアナウンスは、困り果てているボクらを観察嘲笑するかのように、コロコロと変化展開遅延してゆき、結局、翌日昼前の11時を過ぎてやっと列車はやってきた。なんと、17時間もボクらは駅構内に釘付けにされ、少なくともこのボクは、一睡もしないまま、転変しゆくキレイな女声のアナウンスに振り回されながら、不眠不休で待ちつづけたのだ。

 そして、第二陣痛の大波。久々の徹夜で死ぬ思いでカルカッタに到着した後、太一の大スキ!!な蒸気機関車「トーマス」に乗ろうと、ヒマラヤの町、お茶で有名なダージリンに向かう途上、突如、西ベンガル州の独立を求めて死者の出る内乱が勃発したのだ。ダージリンやシッキム(ブータンの隣)に向かうすべての道路が封鎖され、カルカッタへ戻るにもずっと先まで予約でいっぱいで、ほこりっぽくて喧しくって空気も川も腐乱化した交通要所の街「シリグリー」に監禁されたまま、八方塞になったのだ。閉じ込められて3日目の朝、ついに、妊娠6カ月目の愛妻はるかは精神衰弱の果て涙し、「あさって2月15日はお父さんの命日なのに、こんな状態じゃあ」と涙声で訴える。なんと、父親の一周忌を、このボクはスッカリ100%忘れてたのだ。彼女の口から「命日」という言葉が出現したとたん、「うちゅう」、が動いた!!! 無菌室に自ら避難するかのように、気分転換に、おもいきって、街で一番の高級ホテルのレストランに朝食をとりに行ってみたら、金持ちそうなシンガポール人夫婦からいきなり声をかけられ、「私たちは、これからジャングルの中のリゾートに避難します」と、その脱出情報を密かに囁いてくれた。その高級ホテルだけが握っていた唯一の脱出ルートにボクらものって、4日目の朝、手配された高級車でジャングルに向かったのだ。
 「GORUMARA NATIONAL PARK」というジャングルに属するLATAGURIという小さな村に在る「LAKE VIEW RESORT」。地獄の街から天国の村へ!!! リゾートの正面前には大きな蓮池が在り、ピンク色のキレイな蓮の花が、朝、一面に咲く。2階にあるボクらの部屋のベランダのスグ下は、もうジャングルが迫っていて、深夜には、象や野生動物が現れる。父の命日に、ジープに乗ってジャングル深くに入り、ウオッチタワーに行ったとき、河向こうの広くって深い原野を展望しながら、「もしかしてこれは亡き父のなせるわざ? 生前も放浪者のこのボクをいっぱい助けてくれた父のはからい??」と、内奥から祈った瞬間、それに呼応するかのように、遠くに二羽の大きな美しい白い鳥がジャングルから飛び立ち、ゆったりと河を渡っていった。もしかしてあれは亡き父と父の死の3カ月前に逝ってしまった母の化身?? と、祈った瞬間、なぜだか、次の子「満」(みちる)は亡き父母の残してくれた家で「自宅出産」しなきゃ! それも、父母が大好きだったタイル張りの風呂場で「水中出産」を!! という強い想いが湧き起きてきたのだ。


       いつまでも壊されつづける還暦のとろんより。

プロフィール

とろん
1969年高校卒業直後、フランス郵船に乗ってインドに上陸し地球放浪をはじめる。帰国後、専門学校、大学、夫などを中退しながらも、旅と文筆とライブ活動を続行。50歳(2001年)からタイ北部の山間の町「PAI」にベースを移し、村創りをはじめる。現在、2012年12月から108日間の祭り(たましいのかくじっけん)第2弾を想定しながら、桃源郷「NEW MOON VILLAGE」を創作中。著書に『純粋単細胞的思考』『まるだしのエクスタシー』『とろんのダイジョーぶ経典(スートラ)』(共に、晩聲社)がある。
・とろんのホームページ

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