1985年の春、発情物語(中篇)

1985年の春、発情物語(中篇)

vol.4

2010.07

1985年の春、発情物語(中篇)

とろんの「右巻きアートエッセイ」 プロフィール

ボクが31歳の時、ブダガヤ(インド)のチベット寺にて。血便が止まらなく10キロやせて48キロにまで至った、苦境の旅

 人はね、人間から人に社会人から自分自身になろうと試行錯誤を繰り返しくりかえし続ける限り、自分たちに与えられた交換不可能(あんただけ)のいとおしい「いのち」の震えと疼きとふくらみを大切にたいせつに感じ続ける限り、あんた特有のドラマが生まれ出てくるようになってるんだよ。そして、そのドラマが次のドラマをひとりでにつくっていくようにできてるんだよ。


 これはボクの三冊目の本『とろんのダイジョ~ぶ経典(スートラ)』(晩聲社刊)のくだりだけど、人の生き様が、まるで心電図のようにイノチ脈打ち運命波打つ様は、善悪美醜上下左右を超えて「おもしろくっておかしくってHAPPY」にさせられてしまう。来年1月に還暦になるボクだけど、この60年の間に大きなうねりが3回あり、本でいえば三章に分けられる。その「第一章」が前回の「1969年の春」であり「第二章」は今回の「1985年の春」。「第一章」で発情行為極まり「日本脱出」し、一気にその17歳の「異様に美しい」マドンナを惹きつけたボクは、旅の途中から連載執筆をはじめた月刊『サイクル スポーツ』(八重洲出版社刊)誌上で、実名を出してラブコールをしたり、五大陸走破十年計画を彼女に早く会いたいがために一気に2年に短縮し、地球一周して帰国したりして、その発情力に衰えはなかったのだけど、19歳になってますます「異様に美しい」マドンナに成った彼女と、同じ町の至近距離で「ドラマ」を「共演」することに役不足を感じたボクは、その危険な美しさから逃げるように上京し、マドンナとの距離をとった。そして、その怯んだオスの弱気な距離感と緊張感がネガティブ妄想を産み育て、「どうせかなわぬ恋ならば」とますます弱気になり「東京の女の人と婚約した!!!」と涙ながらにウソ偽りの手紙をしたため、自ら絶縁状を送ってしまったのだ。捨てられる前に捨てた形をとって、本能的に失恋の深手を回避しようとしたのだろうか???

 そして、大学にもアルバイトにもいままでの人間関係にも絶縁状をたたきつけ、全てを捨ててリュック一つになったボクは沖縄に向かい、日本最南端の孤島(波照間島)に流れ着いて「放浪の館」という一泊100円の民宿をはじめた。保健所の許可だとか島民の気持ちだとかの一切を考慮することなく、唐突に突如とはじまった。その不法で不穏な館が旅人の間に知られはじめたころ、ボクは宿泊していた一人の女にあ!!っと一目惚れし、出会って三日目にプロポーズし、その5秒後に「ウン、イイよ」とあっけなく快諾され、その奇跡の交感に狂喜したボクは、またもや突如と唐突に「民宿」の看板をおろして「愛の巣」に豹変させたものだ。無意識に突然とはじめた民宿が実はその女の人と出会うための「ワナ」だったとすると、大学をやめたのも沖縄に向かったのも、あの映画『未知との遭遇』のように、結局はその結婚相手と出会うための「発情行為」だったんじゃないかな、と今、分析したりしている(映画では、UFOと出会うため)。
 23歳のとき、彼女から「とろん」と命名され、度を超した「発情力」で結婚に至ったけど、30代に入って二人でインドを旅し、10キロも痩せ細って頭を剃ったボク(写真)に、人生「第二章」の大波が打ち寄せてくる。帰国後、彼女にポイ!!っと捨てられた挙句、大型トラックに大激突して、心も体も死線を半年間彷徨う苦境の日々がつづく。そして半年後、「イノチ」の青ランプが点灯し、再び頭を剃って立ち上がったボクは、こりもせず、またもや、内奥から強く湧き起る「発情力」に阿呆のように突き動かされ、「インド放浪」という名の「発情行為」を繰り返し変化展開してゆくのだ。だから、今のボクの髪の長さには、ボクの「発情物語」の歴史が刻み込まれているといっていい。一瞬先は、ひ、か、り、の「発情物語」、後篇を、お、た、の、し、み。


   エビスビールよりもスーパードライ!! あるいは糖質ゼロ、の酔っ払いとろんより。

プロフィール

とろん
1969年高校卒業直後、フランス郵船に乗ってインドに上陸し地球放浪をはじめる。帰国後、専門学校、大学、夫などを中退しながらも、旅と文筆とライブ活動を続行。50歳(2001年)からタイ北部の山間の町「PAI」にベースを移し、村創りをはじめる。現在、2012年12月から108日間の祭り(たましいのかくじっけん)第2弾を想定しながら、桃源郷「NEW MOON VILLAGE」を創作中。著書に『純粋単細胞的思考』『まるだしのエクスタシー』『とろんのダイジョーぶ経典(スートラ)』(共に、晩聲社)がある。
・とろんのホームページ

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