1969年の春、発情物語(前篇)

1969年の春、発情物語(前篇)

vol.3

2010.06

1969年の春、発情物語(前篇)

とろんの「右巻きアートエッセイ」 プロフィール

1969年の春、インドの沙漠を走る18歳のボク。このあと、ドイツのフランクフルトまで15000キロを7カ月で走った

 来年、2011年1月26日に60歳に成るのだけど、ボクの人生は「発情刻印」の歴史といっていい。時熟し、発情密度が高まるとき、ボクは善悪美醜上下左右を超越し、あ!!っと飛翔してしまう性癖があるようだ。吉永小百合や美智子妃殿下はウンチもしない存在だ! と固く信じていた1969年の春、18歳のボクは、10年がかりで全ての大陸を走破しよう!! と神戸発のフランス郵船「カンボジア号」に乗ってインドに上陸した(写真)。ボクの人生の前篇が終えようとする「還暦」迫る今、40年以上も前の、あの18歳の自分の「飛翔心理」を人ごとのように分析研究したりして楽しんでいる。
 当時は「大学へ進学するか就職するかの二者択一しかなかった社会構造から脱皮し、第三の道を歩みはじめた岡山の高校生」とか呼ばれてマスコミに騒がれたりしたけど、ボクは何が原因で「第三の道」なんかを歩きはじめたのだろう??? 物心がついてからはずっと、何故だか、父や母や家庭の雰囲気が生理的にトテモイヤ!!!だったので、そのイヤ!!な空間や関係からできるだけ遠く離れていたかったから? それとも、学校の集団生活がトテモイヤ!!!で、ずる休みしては日本中を独りで楽しく旅してきたのに、卒業後も大学や会社で同じような集団生活を繰り返すことなど狂気の沙汰!!だったから?? あるいは、度を越したボクの好奇心と成長欲の為せる技???
 ボクが中学2年生のとき、目の玉が飛び出るほど惹きつけられた一つ年下の異様に美しい女の子がいて、その子は、中一ですでに全校の「マドンナ」に成るほどの引力を放ち、ボクをふくめた男子生徒全員が釘付け状態だった。想い極まって、ドキドキしながらもラブレターを描き直接渡したこともあり、高校に入ってからは、意を決して、親の居る家まで会いに行った「事件」もあったけど、「片想い」の不安感と恋心は高まり膨らむばかりで、5年の間、絶え間なく想い慕いつづけたあげく、ボクは本能的に最も効果的な「オス」の求愛表現をしたのだ。

 他の「オス」どもは大学や就職したりして国の番犬みたいに成り果て逝くけど、ボクはオリを破って自由な一匹狼に成るのだ!! そうすることで、一瞬でもいい、彼女の「メス」の心をボクという「オス」の狼的孤高存在に惹きつけたかったのだろう。ボクの高校時代の逸脱した独り旅や日本脱出は人々の話題となり、新聞やテレビにもでたせいか、神戸港へ向かう出発前夜、中学高校時代の男友だちや親戚たちが我が家に大勢集まっているところに、突如と、その美しい17歳の「マドンナ」が出現したものだから、ボクもボクの父も友人たちも、皆、あ!!っとその美しい出現風景に驚いたものだ。やっと振り向いてくれた「マドンナ」なのに、翌日、ボクは独りで旅立ってゆく。その切なさなんかよりも、はじめてつながった「一体感」エクスタシーに包まれたボクは、その刹那の快楽で逝ってしまいそうだった。「もうほかのことなんかは、どーでもいい」というあの快楽特有の極みに在った。
 いろんなマトモな理由を分析し、並べ立てても、結局は、ボクという「オス」のフツーでない強烈なる求愛力が、他の「オス」たちを一気に出しぬき、狙った「メス」を独り占めしようと「日本脱出」という形の求愛活動を取らせたにすぎないかもしれないな、とイヤに冷静に分析してしまうこのごろ。もしかして、激しく疼くヒトの「発情」あるいは「求愛力」を、そうだとは「自他共に」さとらせぬよう、できるだけ遠まわしに間接的に放出してゆくことで、人の「美意識」や人間の「文化」が産まれ出てくるように生物学的に仕組まれているのかもしれないな。ヒトのスケベさを「自他共に」さとられぬよう、あきれるほど遠まわしに間接的に表現してゆくのが「文化人」??? 恐るべしイノチの自動性、だからなあ。


 ずっと発情中の、とろんより。

プロフィール

とろん
1969年高校卒業直後、フランス郵船に乗ってインドに上陸し地球放浪をはじめる。帰国後、専門学校、大学、夫などを中退しながらも、旅と文筆とライブ活動を続行。50歳(2001年)からタイ北部の山間の町「PAI」にベースを移し、村創りをはじめる。現在、2012年12月から108日間の祭り(たましいのかくじっけん)第2弾を想定しながら、桃源郷「NEW MOON VILLAGE」を創作中。著書に『純粋単細胞的思考』『まるだしのエクスタシー』『とろんのダイジョーぶ経典(スートラ)』(共に、晩聲社)がある。
・とろんのホームページ

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